兵庫県明石市は、古来より漁業が盛んに行われて来た、「さかなのまち」。明石浦漁協(明石浦漁業協同組合)では、タイやタコ、ノリ、その他にも四季折々に約100種類もの魚が水揚げされている。
「今の旬は黒メバル、アブラメ、アマガレイ、そして4月からはタイが解禁され、鰆、スズキも脂が乗っておいしい時期に入りますよ」と語るのは、明石浦漁協の代表理事組合長・戎本裕明さん。ただ最近の海はずいぶんきれいにはなったが、栄養が少なくなって漁は悪戦苦闘しているという。
今年は特に栄養が少なくて、魚たちのエサがないとのこと。魚が育ちにくい状況で漁師さんたちが困っている。そこで立ち上がったのが『海底耕耘(こううん)プロジェクト』だ。これは、ノリの色落ちや、イカナゴのシンコ漁の不漁の原因とされる栄養不足の改善に向け、豊かな海を目指す取り組みの一つ。プロジェクトを分かりやすく例えると、農作業のように田や畑をクワで耕すイメージで、海の底を耕して海底に沈んでいる栄養をかき上げる作業。環境改善のために耕す。
明石浦では約10年前から始まった。ノリのシーズンが終わってから夏の8月末くらいまで、週1回の作業。横幅1メートル20センチ、縦幅80センチくらいの鉄製器具「耕うん桁」をロープに結んで船で引っ張り海底を耕す。地味な作業にはなるが、海の栄養が豊富で、多様な生物がすむ海を目指して、今できることを信じて活動を続けている。
「漁師は魚をとるだけが仕事と思われているが、毎日海を見ている。栄養がなくなって来ていることも漁師が感じている。美しいだけではなく栄養を取り戻し、豊かな海を取り戻したい。資源を守って魚をとることを頑張っていく」と戎本さんは思いを述べた。
このプロジェクトのムービーも作成されている(詳細は『海底耕耘プロジェクト』で検索)。さかなのまちで育ち、そこでとれた自慢の海産物を、明石ブランドとして、もっともっと全国に届けたい。その思いをのせて、明石浦の漁師がいまも奮闘している。(嵐みずえ)