今、豊岡の若者らが元気だ。兵庫県豊岡市在住、劇作家・演出家の平田オリザさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』に、「豊岡演劇祭」の舞台に抜擢された地元・城崎の女子中学生が登場。平田さんとともにその経緯を語った。
「青年団の秘密兵器です」と平田さんが紹介したのは、まだあどけなさが残る城崎中学校3年生の井垣ゆうさん。中学1年生のときに参加した平田さんのワークショップで目に留まり、第0回豊岡演劇祭上演作品、青年団「東京ノート・インターナショナルバージョン」に大抜擢。堂々たる演技で、翌年の東京公演も参加した。
「『ワークショップ参加者のなかにうまい子がいる。でも、どこかで見たことがある子だな……』と思っていたら、城崎国際アートセンターの近くにある写真館の娘さんで、中1なのに、やたら堂々としているんですよ(笑)。それはそこで終わったんですが、『東京ノート・インターナショナルバージョン』では7か国の俳優が参加する作品で、もうひとつパーツが足りない。“つなぐ”役割が欲しかったので、井垣さんに声をかけてみたら、『やる』と。これが評判が良くて。稽古場でも劇団員が『あの子、だれ?』『どこで見つけてきたの?』と(笑)」(平田さん)
実績を積む劇団員を驚かせるようなパフォーマンスをみせた井垣さんだが、「舞台経験はなくて、学芸会くらいしか出たことがなかった」。最初はエキストラだと聞いて、見学気分で向かったワークショップ初日、「ちょっとこっち来て」と呼ばれたところから、演劇の世界へ入りこむことに。「舞台の上でどんどんセリフが足されていって、でも『普通』を知らないのでありのままを受け入れてたら『よく、そんなにできるね』って(笑)」と大物感あふれるエピソードも披露した。
「面白いから、どんどんセリフを足していったんですよ」と、平田さん。「中学生だからすぐに覚えちゃう。周りにいた劇団員が落ち込んじゃってね(笑)。あと、井垣さんは生意気にも『それは難しいですね』とか言うんですよ。だから『難しいことをやるのが、俳優なんだよ』と教えました」と、当時のエピソードも明かした。
そうして臨んだ井垣さんの初舞台は大好評。「まだまだやってみたい!」という彼女の意思を尊重し、翌年の東京公演にもチャレンジ。地域や学校をあげてのバックアップ体制のもと、盛況のうちに幕を閉じた。
「最初は好き、というより近くにあった。母の舞台写真撮影について行ったり、無料でお芝居がみれるから行ってみよう、とか」と、「身近な存在」だった、井垣さんにとっての演劇。気づけば、舞台に上がって演じる側に足を踏み入れた。
今回の井垣さんの例は、城崎国際アートセンターが地域と連携したプログラムを続けた成果ともいえよう。井垣さんは「将来は今のところ決めていないですが、人の気持ちを考えたりする仕事に興味があります。あと、豊岡市の中高生ワークショップから児童劇団が立ち上がる予定らしいので、ぜひ参加したいです!」と意欲をみせた。
【江原河畔劇場 公式HP】
※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp