兵庫県立美術館では、2019年に新たに加わった「頴川(えがわ)コレクション」と「梅舒適(ばいじょてき)コレクション」をお披露目する企画展が開かれている。7月4日(日)まで。会期中に大幅な展示替えを行う。
「頴川コレクション」は、大阪の実業家・頴川徳助(えがわ・とくすけ/1899~1976)が蒐集(しゅうしゅう)した日本美術を中心としたコレクションで、その大半は1973(昭和48)年に西宮市に開館した頴川美術館に受け継がれた。その後2019(平成31)年に、運営母体の財団が解散し、重要文化財を含むおよそ250点の美術品が兵庫県立美術館に収められた。
重要文化財《赤楽茶碗 銘 無一物》は、楽焼の祖・長次郎の代表的な赤楽茶碗で、千利休が理想とする茶碗であったと考えられている。赤い土に透明の釉薬がかけられているが、経年のため白乳化していて味わいのある趣を見せている。長次郎の黒楽茶碗は多く残っているものの赤楽は少なく、さらに若いころの作品とされることから「貴重な一品」という。
重要文化財の《三保松原図》(伝能阿弥筆 室町時代 15世紀)は、六幅の掛軸装となっているが、もとは六曲屏風で、富士山を描いた図と一双だったと考えられる。
重要美術品の《肩衝茶入 銘 勢高》は、織田信長が所持していた際に「本能寺の変」で罹災(りさい)したものの、今に伝わっている。
一方、「梅舒適コレクション」は、日本を代表する篆刻(てんこく)家として知られる梅舒適(ばい・じょてき/1916~2008)が、およそ60年にわたって自ら蒐集した文物で、中国近世・近代書画や文房具、梅舒適自身の初が篆刻作品などからなる。今回はコレクションの中でも重要な位置を占める呉昌碩(ご・しょうせき/1844~1927)の作品を中心に紹介する。呉昌碩は、詩・書・画・篆刻に精通した近代中国で最も優れた芸術家とされ、公立の美術館でこれほどまとまった数が収められるのは珍しいという。「梅舒適コレクション」には梅を描いた作品が多く、40代、60代、70代と年齢を重ねるにしたがって、柔らかい線から強い線に変化していく。「篆刻によって培われたもの」と柏木知子学芸員は話す。