観ながら思い出した映画が何本かある。まず、「激突」。元は、当時まだ無名のスティーブン・スピルバーグ監督が撮ったTV映画で、日本などでは1973年に、タンクローリーに押されて列車にはねられそうになる有名な踏切のシーンなどを加え、90分の映画として公開された。腕や蛇皮のブーツのみで、運転手の顔が見えず、彼の乗るタンクローリーがさながら生き物のようで怖かった。
アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「ターミネーター」シリーズも、とことん追いかけられ追い詰められるところがオーバーラップしてくるし、スマホを奪われての恐怖は、中田秀夫監督、北川景子主演の「スマホを落としただけなのに」も思い出した。時間にルーズで、持ち物の管理もずさん、面倒だからとスマホのロックもかけないレイチェルには、同情できない部分もある。
職場で事故に遭い、働けなくなったあげく、妻が別の男のもとへ出て行ってしまい、自暴自棄になった『あおり男』には、その点では少し同情してしまう。もちろんその後のエキセントリックな行動には到底ついていけないのだが、その彼のバックグラウンドが冒頭に描かれている。これはもっと後で明かされる方が、得体のしれない恐怖が増幅される感じになったのでは?というのが、少し残念なところ。
しかし、それよりも何よりも、あの「LAコンフィデンシャル」、あの「グラディエーター」、そして「ビューティフル・マインド」、そしてそして「レ・ミゼラブル」のジャベールとして美声を聴かせてくれたラッセル・クロウの変わりよう……! 結末や、あまりにも残忍な人の殺し方にもけっこうショックを受けたのだが、私にとって一番のショックはラッセル・クロウの体型だった……のだ。(増井孝子)
※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオDEしょー!』、「おたかのシネマdeトーク」より
◆映画『アオラレ』(原題・英題『Unhinged』)
出演:
ラッセル・クロウ
カレン・ピストリアス
ガブリエル・エイトマン
ジミ・シンプソン
オースティン・マッケンジー
監督:デリック・ボルテ『レッド・バレッツ』『幸せがおカネで買えるワケ』
脚本:カール・エルスワース『レッド・ドーン』『ディスタービア』
製作:リサ・エルジー『メン・イン・キャット』『ジェシー・ジェームズの暗殺』
日本語字幕:松崎広幸
レイティング:PG12
配給:KADOKAWA
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