ディズニー史上最も悪名高きヴィラン“クルエラ”の誕生秘話をスタイリッシュに描いた映画『クルエラ』が、映画館&ディズニープラスのプレミアアクセスで大ヒット同時公開中! 悪人=ヴィランについての話や、今作の魅力を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。
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小説や映画でオモシロイと言われる作品は、主人公が魅力的なのはもちろん、対立する敵役、たいていの場合は悪人・悪党=ヴィランが印象的であることも重要なポイントだ。
もともとはアメリカのプロレス業界から来た言葉。「ヒール」(悪役)と並び、今や「ヴィラン」という呼び名も、そのまま日本語の中に取り入れられて定着しているほど、悪役、敵役に魅了されることが増えてきた。
代表的なヴィランと言えば、DCコミックのスーパーヒーロー『バットマン』シリーズの、ジョーカー。1989年の『バットマン』ではジャック・ニコルソン、2008年『ダークナイト』ではヒース・レジャーが演じた。公開前に28歳の若さで急死したヒースには、死後、アカデミー賞の助演男優賞が贈られた。
そして、2019年にトッド・フィリップス監督の『ジョーカー』で主人公ジョーカーを演じ、アカデミー賞の主演男優賞に輝いたのが、ホアキン・フェニックスだ。
ヴィランの名前を冠した作品、過去のバットマンの作品とは一線を画した独自のジョーカーは、鮮烈だった。ヴィランにも哀しい過去や事情があったことを教えてくれた映画といえば、アンジェリーナ・ジョリーが演じて大ヒットし、続編まで作られた『マレフィセント』が印象深い。
1959年のディズニーのアニメーション映画『眠れる森の美女』で、オーロラ姫に呪いをかけた怖い魔女・マレフィセント。彼女の視点から描かれる実写版のこのダークファンタジー映画では、マレフィセントの哀しい過去が明らかにされる。あのアニメ映画で観る限り、残酷で恐ろしく、とても好きにはなれない怖い魔女とは別のストーリーが紡がれたのだ。
そして今、公開中の『クルエラ』。ご存知、1961年公開のディズニーアニメーション『101匹わんちゃん(大行進)』のヴィラン。毛皮が大好きで、旧友のアニータの家にダルメシアンの子犬が産まれたことを知り、誘拐してその毛皮でコートを作ろうという、とんでもない女、クルエラ・ド・ヴィルの半生を描いた実写映画なのだが……。