変わり続ける丹波焼の魅力 写真家・土門拳の愛蔵品「猩々」 リモート・ミュージアム・トーク | ラジトピ ラジオ関西トピックス

変わり続ける丹波焼の魅力 写真家・土門拳の愛蔵品「猩々」 リモート・ミュージアム・トーク

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 丹波焼の魅力を紹介するテーマ展「丹波焼の世界」が兵庫陶芸美術館で開かれている。学芸員によるリモート・ミュージアム・トーク。岡田享子・学芸員に見どころを紹介してもらう。最終回で取り上げるのは、「猩々(しょうじょう)」。

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 兵庫陶芸美術館では、2022年2月27日(日)まで、テーマ展「丹波焼の世界season5」を開催しています。日本六古窯として知られている丹波焼(兵庫県丹波篠山市)は、平安時代の終わり頃に誕生しました。そして、今でもやきものが作られています。丹波焼は、800年あまりの間に大きく移り変わり、見る者の眼を楽しませてくれます。

《壺》銘「猩々」 鎌倉時代 兵庫陶芸美術館(田中寛コレクション) 兵庫県指定重要有形文化財
《壺》銘「猩々」 鎌倉時代 兵庫陶芸美術館(田中寛コレクション) 兵庫県指定重要有形文化財

 今回紹介するのは、「猩々(しょうじょう)」です。中世の丹波を代表するやきもののひとつで、写真家・土門拳(どもんけん)が愛蔵したことで知られています。

 この作品は、能の「大瓶猩々(たいへいしょうじょう)」に登場する大きな酒壺をイメージして、「猩々」と名付けられました。興味深いことに、この特徴的な作品は、まるで能舞台で酒壺の周りで踊る、猩々の顔のようにも見えます。

《壺》銘「猩々」(部分)
《壺》銘「猩々」(部分)

 丹波焼が生まれてまもない、鎌倉時代に作られたこの作品は、底が小さく、胴部は張り出しています。つやのある赤茶色をしたうつわの表面には、窯の中で意図せずにできた大きな火ぶくれが、瘤(こぶ)のようにでこぼこして、見どころとなっています。この壺を見ると、想像上の酒好きな動物である猩々の、酔っ払った赤ら顔が思い浮かぶのは、私だけでしょうか。

 5回に渡って、丹波焼の「描かれた模様」「心に浮かぶイメージから名付けられた模様」「窯の中で偶然に生み出された模様」を取り上げ、その魅力を紹介しました。この機会に、緑に囲まれた森の中の美術館で、丹波焼をどうぞご覧ください。(兵庫陶芸美術館 学芸員・岡田享子)

兵庫陶芸美術館
兵庫陶芸美術館

※詳細は、展覧会HPをご覧下さい。
【兵庫陶芸美術館 HP】
【丹波焼の世界season5 HP】

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