兵庫県の播磨地域が誇る手延べそうめんブランドと言えば「揖保乃糸」。その主力商品「上級品300グラム」の出荷量が昨シーズン、9年ぶりに記録（154万箱）を塗り替え過去最高の155万箱（2億7900万把分）を数えたという。中元や歳暮などギフト市場は縮小傾向にあるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で家庭内食の需要が高まったためだ。
兵庫県手延素麺協同組合の特約販売店「森口製粉製麺」（たつの市神岡町）の森口暢啓社長（39）は「世間には簡単便利な食品があふれているが、巣ごもりで時間に余裕ができたのか、調理の一手間が苦にならなかったのでは」と分析する。
同社は明治初期から代々、150年続く老舗製麺会社。農業の副業としてそうめん作りに取り組んだのが起源だが、明治後半に2代目がそうめん作りを機械化して品質と生産量の安定化に成功、揖保川の水流を活用した水車製粉も始めた。
3代目は1964（昭和39）年、姫路市広畑区で列車のコンテナを利用した直売所「黄色い貨車の店」を開設。近隣の大手企業社宅に住む単身赴任者が故郷へのお土産としてこぞって買い求めたそうだ。夏季と冬季の期間限定営業だが、今も地域住民に愛されている。アイデアマンの先代は、童謡赤とんぼのメロディーが流れるオルゴール木箱入り商品や、カレー粉を合わせたカレー麺などバラエティに富むオリジナル商品を次々と開発していった。カレー麺は5年前の「全国そうめんサミット」で準グランプリに輝いた。
15年前に経営を受け継いだ5代目・森口社長は、食品に求められる品質基準が年々高くなっていることを背景に、食品工場の安全マネジメントシステム国際規格を取得するなど衛生管理に徹底して取り組んだ。オリジナル麺や企画商品の開発意欲も先代ゆずりで、地元になじみ深いJR姫新線の車両を模したパッケージ商品は17年に兵庫県の「五つ星ひょうご」に選定された。
今は海苔やネギを練り込んだアイデア素麺やカレーパスタを開発中で、「従業員やパートナー企業の自由な発想から生まれた遊び心満載の企画を商品ラインアップに反映していきたい」と森口社長。自前のオンラインショップも最近リニューアルし、600年以上続く伝統食の販売拡大に燃えている。（播磨時報社）
◆森口製粉製麺株式会社
兵庫県たつの市神岡町横内173
電話 0791-65-0266
【公式HP】
《工場直売所》
「もりぐちの麺や。」
兵庫県たつの市神岡町横内173
営業時間 火曜・金曜／10:00～15:00
「黄色い貨車の店」
姫路市広畑区西夢前台5-288
営業時間 夏季と冬季のみ（月曜定休）／10:00～16:00
