SF作家ケン・リュウが原作、芳根京子が主演し、『蜜蜂と遠雷』の石川慶が監督としてメガホンをとった、永遠の命を得た女性の人生を描く映画『Arc アーク』が6月25日より公開されています。今作の魅力を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。
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年を重ねるということは、どんどん別れを経験する機会が増えるということ。家族、友人、知人、ペット……、大切な人や動物、愛してきたモノとの別れは本当にツライ。いつまでも一緒にいたいと思うけれど、それが叶わないことは百も承知で、だからこそ限りある時間をどう過ごすかが大切になってくる。
でも、もし不老不死を手に入れ、永遠の命を手にすることもできるなら、貴方はどうする?
原作は中国系アメリカ人の作家ケン・リュウの「円弧(アーク)」。彼は、2012年「紙の動物園」でヒューゴ賞、ネビュラ賞、世界幻想大賞というSFの主要な3賞の短編部門を独占したという現代SF界をリードする作家であり、中国の作家を英語圏に紹介する翻訳者としても活躍中だ。
脚本を書き、監督し、編集も手掛けたのが石川慶。ポーランド国立映画大学で演出を学んだ彼は、「愚行録」(2017)、恩田陸の直木賞と本屋大賞のW受賞作「蜜蜂と遠雷」(2019)などでメガホンを取った。今作では同じ大学で撮影を専攻したピオトル・ニエミイスキを撮影監督に迎え、色彩や音など、どこかヨーロッパ風な独特の映像世界を生み出した。
17歳で出産したリナ(芳根京子)は産院に赤ん坊を残していなくなり、19歳のとき放浪生活のなかクラブで踊っていたところを、化粧品会社・エターニティ社のエマ(寺島しのぶ)に出会う。
すぐに会社を訪ね、彼女のもとで仕事を始めることになるリナ。実はこの会社、最愛の存在を亡くした人の依頼を受け、遺体から血液を抜いて防腐剤を注入する「プラスティネーション」という施術をし、その身体を糸で操って最もその人らしい生前の姿を留めておく“ボディワークス”というテクニックで注目を浴びている会社だった。
残された遺族の依頼で、少しでもその悲しみを和らげようとするエマの技術は、そのままリナに受け継がれていく。
◆『Arc アーク』
6月25日(金) 全国ロードショー
キャスト:
芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり/倍賞千恵子/風吹ジュン、小林薫
原作:ケン・リュウ『円弧(アーク)』(ハヤカワ文庫刊 『もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2』より)
脚本:石川慶 澤井香織
音楽:世武裕子
監督・編集:石川慶
製作:2021映画『Arc』製作委員会 製作プロダクション:バンダイナムコアーツ
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2021映画『Arc』製作委員会
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