【露の団姫】 そうですね。「悟りを求める志」を道心と言うんですが、伝教大師・最澄様のお言葉に「道心の中に衣食(えじき)あり、衣食の中に道心なし」というものがあります。これは、悟りを求める志があれば最低限の衣食住はついてきて、反対に衣食住のために仏道を歩むのであればそこに志はない、というお言葉なんです。
私は今、自宅を担保に入れながらお寺の建設などローンの支払いをしているんですが……それでも「やるぞ!」という気持ちがあれば、どうにかなるという励ましのお言葉ですし、逆に、生活のために仏道をするんではないぞという戒めのお言葉でもあります。本当にこの教えが好きなので、だからお寺の名前も『道心寺』でピッタリだなと思っています。
――道心寺では今後、どのようなことを行っていく予定なんでしょうか?
【露の団姫】 基本的には、まずお悩み相談を中心にやっていきたいなと思っています。別に私はカウンセラーではないので、専門的なことはできないんですが、皆さんに共感する気持ちというのはすごく強いと思うんです。だからお悩み相談を通して、苦しみの棘を抜いてもらうというイメージ。抜苦与楽(ばっくよらく)という言葉が仏教にあります。『苦を抜き取って楽を与える』ということなんですが、ここでお悩み相談をして苦を抜き取って、そして落語で笑っていただく、この抜苦与楽を実現するようなお寺にしたいなと思っています。
◆「仏教に救われた」露の団姫さんの過去
――露の団姫さんが、仏教の道を目指したきっかけを教えてください。
【露の団姫】 もともと、小さな頃から『人間って死んだらどうなるんかな?』と思っていまして。私が3歳のときに祖父が亡くなったんですが、祖母に「おじいちゃん、どこ行くの?」と聞いたら「焼きに行くねん」って言われて……「いやそうじゃなくて!」と思ったんですけど(笑)。それ以来、今、自分がうれしい・悲しいと感じている魂、気持ちはどこへ行くのかという疑問から宗教に興味を持ちました。キリスト教の聖書を読んだりイスラム教の勉強をしたり、それぞれどの宗教も素晴らしいなと思ったんですが、その中でも私は、仏教の法華経というお経に救われたので、仏教の道を歩むことに。
実は私、高校時代にすごくつらいことがあって、もう死んでしまいたいと思ったことが1年近くあったんです。それである日、もう今日は死んでしまおうと思ったときに、「いや、でも、私はお釈迦様の弟子だから……」と。心の中ではもう弟子になっていたんですね。だから「私が自分で死んでしまったら、お釈迦様が悲しむんちゃうかな? それは弟子としてアカンわ!」と思って、死ぬのをやめたんです。そんな経験があって、私の場合はお釈迦様でしたけど、その他にもいる神仏の存在が人間の自死を思いとどまらせてくれたらな、と思っているんです。