アカデミー賞脚本賞受賞 暴力や銃に頼らない復讐劇を、おしゃれなタッチで描く | ラジトピ ラジオ関西トピックス

アカデミー賞脚本賞受賞 暴力や銃に頼らない復讐劇を、おしゃれなタッチで描く

LINEで送る

この記事の写真を見る(3枚)

この記事の動画を見る

 30歳、実家暮らし、コーヒーショップでのアルバイト。前途を約束されていたかつての彼女からは、およそ考えられないような人生の展開。ニーナを失い、世の男性すべてにいら立っているようなキャシー。

「男だから」、「証拠が不十分だから」という理由で、おとがめなしのまま、今や医者として社会的地位を築いている犯人たち。現場に居合わせたのにニーナの訴えを無視したマディソン(アリソン・ブリー)や、前途有望な男子は守り、女子は見殺しにしてきた学部長ウォーカー(コニー・ブリットン)らの女性にも怒りの矛先を向ける。

 世の中の不公平、ジェンダーバイアスに対しても怒りをぶつけるように、キャシーは復讐に燃える。

 そんなある日、コーヒーショップで再会した、かつての同級生ライアン(ボー・バーナム)。何度か会ううちに心惹かれ、心配する両親のためにも、「小児科医として立派になった彼との人生もアリかな?」と思いかけた矢先、ライアンから、主犯の男が麻酔科医として成功した生活を送り、結婚までしようとしているというニュースを聞く……。

© 2020 Focus Features

 レイプ事件は、日本では伊藤詩織さんの事件に代表されるように、なかなかその実証は難しい。被害者にも落ち度があったのでは?という偏見、取り調べや裁判でのセカンドレイプ……それらを恐れて訴え出ないケースも多いようだ。

 世界的に注目される社会派のテーマを、エンタメとしても、ホラーとしても、ブラックコメディとしても、ラブコメとしても楽しめるよう、ファッションや美術などすべてに心を配ったフェネル監督。特にサントラのエグゼクティブプロデューサーとして、ブリトニー・スピアーズの『トキシック』などのプレイリストを事前にキャリー・マリガンに送ったというほど、音楽にはこだわった。

 80年代のロックビデオ的効果を狙った、明るくポップなネオンカラーがあふれる画面は、みごとに成功している。

 結局、キャシーが求めていたのは何だったのか? そのやり方は、正しかったのだろうか? たくさんの“?”を突き付けながら、あくまでオシャレなタッチがにくい、フェネル監督の長編デビュー作だ。(増井孝子)

※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオDEしょー!』、「おたかのシネマdeトーク」より


『プロミシング・ヤング・ウーマン』
脚本・監督:エメラルド・フェネル「キリング・イヴ/Killing Eve (エグゼクティブ・プロデューサー )」
編集:フレデリック・トラヴァル
出演:キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリー他
2020年 アメリカ 英語 113 分 シネスコ ドルビーデジタル
原題:PROMISING YOUNG WOMAN / 日本語字幕:松浦美奈
ユニバーサル映画 配給:パルコ 映倫:PG 12
【公式サイト】

LINEで送る

関連記事