神戸市北区筑紫が丘の路上で2010年10月、高校2年の堤将太さん(当時16)が刺殺された事件で、兵庫県警・神戸北署捜査本部は4日、将太さんを殺害した疑いが強まったとして、殺人容疑で当時17歳の少年だった愛知県豊山町のパート従業員の男(28)を逮捕した。
事件は発生から10年10か月で急展開を迎えた。捜査関係者によると、男は事件当時、事件現場近くに住んでいたとみられる。取り調べは本格化、詳しい経緯や動機の解明へ捜査を進める。捜査本部は犯行時少年だったことから、男の氏名や逮捕時の認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は2010年10月4日午後10時45分ごろ、神戸市北区筑紫が丘4丁目の歩道上で、将太さんを刃物のようなもので突き刺すなどして殺害した疑い。
捜査関係者によると、男はパート従業員として、店舗が複数ある施設で広報資料の作成や、店ごとの売り上げ管理を担当。4日正午前の任意同行には素直に応じたといい、愛知県警小牧署で逮捕、4日午後に捜査本部がある兵庫県警神戸北署へ移送した。
将太さんは、知り合いの中学3年の女子生徒と路上で一緒にいたところを襲われた。死因は失血死。首の付け根の傷は約8センチに達し、頭や背中にも傷があった。
女子生徒は事件後、捜査本部の聞き取りに「襲ってきたのは知らない男だった」と説明。発生から6日後、現場の南西約100メートルの側溝で全長約20センチのナイフが見つかり、血痕が将太さんのDNA型と一致し、凶器と断定したが、指紋など第三者による付着物が検出されず、捜査は難航していた。
10年越しの犯人逮捕。兵庫県警はこれまで延べ約3万3千人の捜査員を投入していた。真鍋克巳・捜査第一課長は「捜査員の緻密な捜査の積み重ねとご遺族に寄り添った対応が実を結んだ。よくここまでたどり着いた。そして何よりもご遺族の思い。本当に辛く、苦しかったと思う。事件は1つの局面を迎えたが、ご遺族の気持ちが癒されるわけではない。今後、全力を挙げて犯行に至る経緯を明らかにしたい」と話した。
警察庁は2020年12月、解決につながる重要情報の提供者に支払う公的懸賞金(捜査特別報奨金)の対象期間をさらに1年延長。9年目となり(更新は8回目)、4年ぶりに年間の情報提供件数が100件を超え(2019年12月7日~2020年11月30日 /104件)、さらに2021年6月までの半年間で約70件の情報提供があり、世間の関心の高さをうかがわせた。容疑者逮捕を受け警察庁刑事局は今後、兵庫県警と協議し、懸賞金制度の停止手続きに入る見込み。