1980年代半ばに大流行し、社会現象になった「ビックリマン 悪魔VS天使シリーズ」。同時期には、複数の菓子メーカーがこのブームに乗じ、類似商品をこぞって売り出した。もちろん、駄菓子屋を主戦場とする、紙製玩具メーカーもこのブームに乗る。その中のひとつに「おどろきマン」が存在した。この「おどろきマン」の収集家であるダイ氏(46)に話を伺うと、いわゆる「パクリ」の一言では到底済ませることのできない、奥が深~い面白さが見えてきた。
■ある日気付いた「これは、とんでもないことになっているぞ」
「おどろきマンシールは、駄菓子屋などで売られていて1枚20円。くじ引き方式で手に入りました。販売時期はおそらく、1986年末から87年ですね。私は当時11~12歳くらいでしたが、ビックリマンチョコは本当に売っていなかったんです。でも欲しい!という心の欲求を埋めるために、(おどろきマンの)くじを引いていた感じです」と、ダイ氏は当時を振り返る。
ダイ氏は、「子どもの頃は深く考えず、ビックリマンに似ているから買っていた」だけだと話すが、なぜ最近になって集め始めたのか。「ビックリマンシールは、もう欲しいものは集めちゃって。さらに何かないかな?と考えた時に、『おどろきマンってあったな』と思い出したんです。探していくうちに『これは、とんでもないことになっているぞ』ということが分かってしまって……」(ダイ氏)。一体、どういうことなのだろう。
■「力の入れ方が明らかに違う」随所に見える印刷加工会社の「本気」
ダイ氏は、おどろきマンの魅力を、「力の入れ方が他のくじ引きシールとは明らかに違う。『ビックリマンのパクリ』にとどまっていない」と表現する。ビックリマンの10代目「悪魔VS天使シール」からは、悪魔、天使、お守りの3つの種族(すくみ)が登場したが、おどろきマンシールは悪魔、天使、お助けの3すくみである。そして各すくみを統べる「ヘッド」も同様に存在する。ビックリマンの「スーパーゼウス」はあまりにも有名だが、おどろきマンにおける同様のおじいさんの名前は「スペシャルゼウス」。やはりところどころに影響を感じる。
「正方形のシールにキャラクターが描かれていて、たまにキラキラしている。それぞれに名前があって、裏面には説明書きがあって……それだけなんですけど、それだけじゃないんですよね。ビックリマンだと、悪魔と天使が繰り広げる勢力争いのストーリーがあって、漫画やアニメなどにもなりましたが、おどろきマンは駄菓子屋で手に入る単なるシールにすぎず、世界観は自分で想像するしかない。単なるビックリマンのコピーシールではなくて、メーカーの人たちが全部、自分たちで考えて作っていたっていうのがアツいんです」とダイ氏は力説する。