野坂さんは晩年、「小説で舞台となった神戸や西宮の街をぜひ、めぐって欲しい。風景はあの時代を物語っている」と話したという。「歩く会」では、今後も若い世代への継承を視野に、活動を続けたいとしている。
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2018年に御影公会堂の解説講座を受けた兵庫県姫路市の20代の女性は、当時大学生。今は東京都内で社会人生活を送っているが、終戦の日が近づくと、ふと神戸を思い出す。「3年前は猛暑の影響で、みんなで歩くことが出来ず、いただいたマップをもとに個人でゆかりの地を歩きました。現在の神戸からは想像し難い出来事がこの場所で起こっていたんだなと深く考えさせられました。年に一度でも、身近な地域で起こった戦争について考える機会を設けることは大切です」と話す。そして2021年6月26日、「神戸空襲を記録する会」の中田政子さん逝去の報を聞き、胸が痛んだという。
今年、歩く会に参加した兵庫県川西市の70代の女性は「戦争を知らない私ですが、父は史上最悪の作戦「インパール作戦」で腕に弾丸を受けたため奇跡的に帰国しました。また、母の兄は神風特攻隊の体当たり特攻で敵に突っ込んで亡くなりました。神戸大空襲の焼夷弾の雨も話に聞いただけでしたが、小説「火垂るの墓」を読み、アニメを見て、その舞台を歩き、両親を亡くした清太と節子の苦しみを思う時、戦争の悲惨さを絶対に忘れてはいけないと思います」と誓った。