パラリンピックではメディアを通じて、色々な競技を観て、多くの選手の言葉を聴きました。自分の持てる力を最大限発揮しようとひたむきに取り組む選手の姿には、心打たれます。そういう意味では、オリンピック選手もパラリンピック選手も同じなんです。障がいがあってもなくても関係なく、ただそこに一人の(もしくは1チームの)スポーツ選手がいるだけなんですよ。ごく当たり前のことなんですが、自然に心からそう思えたほど見応えいっぱいの『東京2020オリンピック・パラリンピック』でした。
■叶えたい夢とコロナ収束への思い
まず第1に、日本ではまだ誰も経験したことがない、ブラインドセーリングのレースに出場することです。来年8月、三重でそれが実現できることを願っています。今年残念な思いをしただけに、来年こそは走ってみたいです。美しい海の上を。ダイナミックな波を全身で感じながら。今からとてもワクワクします。
このレースでは、安全のため、選手一人一人の船の後をモーターボートが付いてきてくれます。そして、何かのトラブルが起きた時や選手同士の船がぶつかりそうになった場合には、ハンドマイクで警告してくれるそうです。また、視覚障がい者には、レースのスタートラインを認識することが難しいため、スタート時は、このモーターボートに乗ったスタッフが選手の船をキャッチ&リリースしてくれることになっています。ヨットで周回する”ブイ”(浮標)の場所を選手が自力で見つけられるように、ブイから音を出すことはもちろん、ブイまでの距離を音声で知らせてくれるGPSのナビも利用できます。色々なことに配慮された、安心・安全で面白いレースになりそうです。
また、来年7月にも地元大阪で行われるレースが予定されています。このレースは視覚障がい者だけでなく、車椅子の方、手が不自由な方、知的障がいの方、健常者の親子連れ、高齢の方など幅広く門戸を開き、毎年この時期に行われているのですが、次回は特に楽しみです。なぜでしょう?このようにさまざまな方が大勢参加されるレースでは、目が見えにくい私は、他の船にぶつかって迷惑をかけないかと心配で、これまでは、なかなか一人乗りで参加する勇気が出ませんでした。ところが、今年7月に行われたレースで、その気持ちを克服することが出来ました。なぜか?「これは視覚障がい者が乗っている船だ」ということが周囲の人に一目で分かるように、船に印を付けたからです。視覚障がい者が町を歩く際、白杖を持つことで周囲の人に注意してもらえるのと同じ理屈です。目立つ色のセール(帆)にしたら良いのでは、とアドバイスをいただき、いつも応援してくださる方から濃い茶色のセールを選んでもらったのです。このように周囲の方のご理解とご協力のもと、地元でも一人乗りのレースを楽しめるようになって、とても嬉しいです。こちらのレースでも、ブイから音が出るようになっています。
私にとってヨットは、地上では叶えられない、車や自転車を運転して、自由に走り回りたい、という夢を叶えてくれるもの。同時に、大好きな海を思い切り味わえるものです。そんなヨットに出会えた幸運をかみしめながら、これからもずっと、セーリングを続けて行きたいです。そして、そのかけがえのない楽しみをどんな時も応援してくれる、マリンスポーツを愛する人たちのグループ「セーラビリティ大阪」のみなさんをはじめ、ボランティアの方々の愛に報いるためにも、レースで良い成績を残したいです。そしてさまざまなスポーツ大会が安心して行うことができるよう、1日も早いコロナの収束を願っています。