重陽祭では「不老長寿」「除災招福」を願い、白色と黄色の菊を供える。さらに最前線で新型コロナウイルスに向き合う医療従事者の安全を祈念するため、青色の菊も神前に供えられた。そして雅楽の調べに合わせて菊の花を手に、菊の挿頭をつけた舞人による舞楽が奉納されるが、 祭典終了後、参拝者に振舞われる菊酒の振る舞いはコロナ感染防止のため中止に。
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若き女性神職の東山詩奈(しいな)さん(25)は神戸・垂水出身。明石海峡を見て育ち、学生時代に実家近くの海神社(わたつみじんじゃ・かいじんじゃ 神戸市垂水区)で巫女として奉仕したことがきっかけで、この道を選んだ。
「ごく普通の家庭に生まれ、山と海に囲まれた神戸からこの地に。同じ関西でも、開放的な神戸と伝統を重んじる京都、その違いはそれぞれの良さ。コロナ禍で観光地・嵐山は大打撃を受けた。感染対策を考えながら、少し人出が増えつつあるとはいえ、外出自粛ムードで大半の方々が季節を空気で感じることができなくなったような印象を受ける。だからこそ、粛々と祭事を執り行い、世代を問わず、日本人が失いかけた季節感を取り戻したい」と意気込む。そして「旧暦の9月9日・重陽は、新暦で今年は10月14日。これから迎える節句をより意識していただける」とも語る。
車折神社に近い、右京区太秦(うずまさ)に住む女性は「祇園祭や五山の送り火の開催が縮小された夏が過ぎて、秋を感じる神事、重陽祭に触れられて良かった。上賀茂神社(京都市北区)の烏相撲は中止だったが、コロナ禍で外出がはばかれる中、感染防止対策を施していただけたのがありがたい」と満足気に。また密を避けるために、自家用車で訪れた神戸市東灘区の女性は「厳かな舞楽を目にして、日本の伝統や季節感を大事にせねば、と思った。様々な伝統行事、とかくコロナのせいにして取りやめにせず、後世に伝えることも大事」と話した。