歌舞伎の「千秋楽」を「千穐楽」と書く理由 「秋」という字の中にヒントがあります | ラジトピ ラジオ関西トピックス

歌舞伎の「千秋楽」を「千穐楽」と書く理由 「秋」という字の中にヒントがあります

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 猛暑の夏が終わり、ようやく秋の気配が漂ってきました。そこで今回はこの言葉。「千秋楽」。

「秋」という字が入っていますが、1年を通じて演劇や大相撲の最終日などを示す言葉として使われています。どんな意味と由来があるのでしょうか?

 新明解国語辞典(三省堂)によりますと……、

[何日か続いた法会の最後の日にはいつも雅楽の「千秋楽」という曲を奏したことから]演劇・すもうなどの興行の、最後の日。略して「らく」。また「らくび」とも。……とあります。

 また、広辞苑(岩波書店)にも上記と同じような意味とともに、「雅楽曲の唐楽、盤渉調(ばんしきちょう)の曲。舞はない。」や「能『高砂』の終わりにある文句。」などとあります。

 こうした雅楽や法会などをきっかけに、使われるようになったそうです。いつ頃から使われたのか、確かなことは言えませんが、少なくとも江戸時代には存在していました。ところが、「歌舞伎」など一部の演劇公演では、「千秋楽」という字ではなく、「千穐楽」という字が用いられています(読みは同じ)。なぜ、「秋」ではなく、「穐」なのでしょうか。

 話は江戸時代にさかのぼります。当時、日本最大の都市・江戸(今の東京)ではこんなことが言われていました。

「火事と喧嘩は江戸の華」

 江戸はとても火事が多い町でした。なかでも1657(明暦3)年1月の「明暦の大火」は、江戸時代で最も大きな火災と言われています。きっかけは着物の振袖でした。同じ振袖を着た3人の女性が立て続けに病気で亡くなったそうです。このため、その振袖を焼こうとしたところ、火のついた振袖が風で舞い上がり、付近に延焼。そしてその火が江戸市中にも広がり、10万人を超える人が亡くなりました。また、江戸城の天守閣も焼け落ちたほか、多くの人たちが住む家を失ったと伝えられています。こうしたことからこの火事は「振袖火事」とも呼ばれています。

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