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すべてのシーンが、まるでフェルメールやカラヴァッジョの絵画のように美しい。音は極限まで抑えられ、エンドロールも途中まで無音という静謐(せいひつ=静かで穏やかなこと)。そこには、女性たちの声に出せない思いが込められているよう。女であることから逃避し、「女」を拒絶しながら生きてきた2人が自分らしく生きると決意した。今後彼女たちをどのような未来が待っているのか、果たしてそこに幸せは在るのか……? 含みを持たせたエンディングはいろいろな受け止め方ができそうだ。
実はこの作品。NHKの朝の情報番組で紹介された際、俳優の中谷美紀さんが「こういう、メジャーではないけれど良い作品を取り上げてくれて、映画界の末席にいる者としてうれしい」と涙を浮かべられた姿に感動し、観に行った経緯があった。上質な映画と出会い、それを番組などさまざまな場面で伝えていけることを私自身もうれしく思うし、またある意味責任も感じる。そんなキッカケになった1本。特に思い入れの深い作品に加わった。(増井孝子)
※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオDEしょー!』、「おたかのシネマdeトーク」より
『モロッコ、彼女たちの朝』
監督・脚本:マリヤム・トゥザニ(長編初監督)
出演:ルブナ・アザバル『灼熱の魂』『テルアビブ・オン・ファイア』
ニスリン・エラディ
製作・共同脚本:ナビール・アユーシュ『アリ・ザウア』
2019年/モロッコ、フランス、ベルギー/アラビア語/101分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/英題:ADAM/日本語字幕:原田りえ
提供:ニューセレクト、ロングライド
配給:ロングライド
【公式HP】