兵庫県弁護士会は10月から、親からの虐待疑いなどで児童相談所(児相)に一時保護された子どもに弁護士を派遣する制度をスタートする。一時保護中に自分の思いを表明するのが難しい子どもから弁護士が意見を聞き取ることで、処遇を改善するのが狙い。子どもの権利保障の在り方が問われる中、弁護士会によるこうした取り組みは兵庫が全国初という。
一時保護は、虐待が疑われる場合、児相が児童福祉法に基づき、保護者の同意を得ずに子どもを引き離す措置。
兵庫県弁護士会によると、対象は県と同県明石市の児童相談所計8か所。児相が保護した子どもに制度を説明し、希望があれば派遣を求め、研修を受けた弁護士25人が48時間以内に子どもと面談する。聞き取った意見は児相側に伝え、親との面談頻度や親元に帰す時期の判断のほか、保護中の学習環境の整備に生かす。
兵庫県では2018~19年、明石市の当時生後2か月の男児が右腕を骨折し、児相が虐待の疑いで一時保護したが、その後裁判で虐待が否定されるまで約1年3か月にわたり親子が引き離され問題となった。大学教授らによる県児童虐待防止委員会は2021年6月、改善策として弁護士が子どもの意向を聞く仕組みを提案した。
曽我智史副会長は「一時保護された子どもは将来の見通しが不明で不安を抱えている。子どもの主観的な思いを大切にしていきたい」と話した。 虐待事件が裁判に発展した際、支援員を務めた弁護士が子どもの代理人を務めるなど幅広い支援も視野に入れる。