1990年代から2000年代初頭にかけて国内で流行した「MD(ミニディスク)」。小さな本体に音源がたくさん入り、音飛びもしないというこの録音・再生媒体は、カセットテープよりも高性能で、CDよりも手軽という点が人気を呼びました。
しかし、最近では見かけることがなくなり、“最後のMDオーディオ”といわれた、音響機器メーカー「TEAC(ティアック)」の MD・CD一体デッキ「MD-70CD」も2020年12月で販売が終了。今年12月に発売される「三省堂国語辞典 第八版」では、「MD」という言葉自体が削除されることが決まっているそう。「MD」はこのまま消えてしまうのでしょうか? 国内で最後までMDオーディオ機器の生産・販売を行っていたティアック株式会社に聞きます。
――MDの最盛期はいつ頃だったのでしょうか?
2000年代前半です。アーティストの新曲がMDで発売されることは少なかったですが、レンタルショップなどで借りたCDを自分でダビングし、カセットテープのように自由にオリジナルのアルバムを作って楽しむという使用のされ方が多く見られました。また、ポータブル再生機も人気で、カーステレオにMDシステムが搭載されることも多く、世間で「MD」が一番流行していた時期だったのではないでしょうか。
――MDが衰退した原因は?
2001年に発売されたiPodの市場が広がったことです。そもそもMDは、ほとんど日本国内でしか使用されなかった録音・再生媒体です。国内で、MP3などのデータでの音楽再生の需要が高まるにつれ、MDが使用される機会は少なくなっていきました。弊社の製品も、少しだけヨーロッパやロシアで売れた以外は、ほとんどが国内からの注文でした。
――ティアック製のMDオーディオが一番売れたのはいつ頃ですか?
弊社の製品が一番売れたのは2005年頃です。その後は、他社がMDオーディオの製造から撤退していくなか生産や販売を続けたことで、安定した需要を集めることができていました。