この言葉に支えられて、ボクはがむしゃらに働きます。
1999年。ノストラダムスの大予言で地球が滅びるとされていた年。でもそんなことは起こらず、彼女はさよならも言わずにボクのもとを去ってしまいます。
時が過ぎて2020年。小説家にはなれず、社会と折り合いをつけながら生きてきた46歳のボク。ボクはコロナ禍で閑散とした夜の繁華街で、かつて昼も夜も一緒に過ごした友人と再会し、思い出をたどります……。
主人公の“ボク”を演じるのは、神戸市東灘区出身の森山未來です。彼女だったかおりを伊藤沙莉、ボクと同じ字幕制作会社で働く同期を東出昌大が務めます。森山と東出は20代からの40代までの25年間をうまく演じ分けていて違和感がありません。
伊藤は処女を失うラブホテルの場面で裸になる体当たり演技をみせています。ほかに萩原聖人・大島優子・SUMIRE・篠原篤らがボクにからみます。
原作は、作家の燃え殻が2016年に発表したデビュー作。忘れられない恋をしたボクがたどってきた出来事を、時代の移り変わりとともに描いています。多感な世代に誰もが思う“普通でないのがいい”という価値観がストーリーのキーワードになっています。一方で普通の人の物語としてエピソードを重ねていますので、誰でもスクリーンに感情移入できます。
普通に歩むありきたりの人生ってつまらない、と大抵の人はある時期に考えますよね。着ている服も聴く音楽も付き合う恋人も、自分独自の感性を反映しているのがいい、ということです。でも仕事で現実の社会と向き合って過ごすうちに、逆に普通がいいという気持ちに変わったり、抱いていた夢をあきらめたりします。