一方、近所の主婦・富永佳代子(田中美佐子)は2人の関係をフラットに受け止めている。彼女は、スーパーのまとめ売り商品を史朗とシェアする仲で、「気が合いそうだから」と、夫のテニス仲間・小日向大策(山本耕史)を紹介してくれる。芸能プロダクションに勤める小日向には、デイトレーダーの井上航(磯村勇斗)という同性の恋人がいる。彼のことを少女漫画に出てくる美少年ジルベールのようだと崇め、ワガママをすべて許し、振り回される毎日を送っている。
そんな2組のカップルが、食を通じて交流を深めていく。小日向家の冷蔵庫が壊れた時には食材をシロさん宅に持ってきて、料理上手な佳代子にも手伝ってもらってご馳走を作る。そう、このドラマの片方の主役は、おいしそうな料理の数々なのだ。それも、特別な材料ではなくすぐ手に入りそうな食材で作る。これが本当においしそう! 原作漫画でも詳しいレシピにページが割かれているのだが、ドラマでもこの映画でも、史朗が手際よく作る料理のシーンが見ものなのである。
独占インタビューなど情報たっぷりのオフィシャルブックに加えて、「シロさんの簡単レシピ」と銘打った公式ガイド&レシピ本も2冊、講談社から出版されている。ストーリーガイド、登場人物のキャラクターガイド、西島秀俊、内野聖陽、よしながふみの3人による鼎談に加え、シロさんが劇中でつくる料理のレシピは見るだけでお腹が鳴りそうな写真も満載。レシピ本としてもしっかり使える、お得なガイド本になっている。
西島秀俊と内野聖陽と言えば、ついこの間までNHKの朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』で、気象予報士と主人公の父親という役柄で共演していた。この映画では2人が全く違う顔を見せる。実は脚本が、その朝ドラと同じ安達奈緒子だ。
そして、現在放送中の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』出演中の松村北斗(SixTONES)が、この映画では賢二の後輩美容師を演じている。あけすけな物言い、空気の読めないキャラの新入りスタッフ・田淵剛役で登場し、史朗と賢二の仲にひと波乱の気配……というのも話題の一つだ。
主題歌はスピッツ書き下ろしの『大好物』、監督はドラマの時から引き続いて中江和仁。10月31日にはオンラインランチ会を実施、内野聖陽が紫綬褒章受章と、いろいろと話題のこの映画。コロナ禍で人と会えなくなったり、大人数でご飯を食べることができなくなったり、寂しい時間を過ごしてきたことを振り返り、いかに普通の日常が大事だったか、そばにいる人との何気ないふれあいが心温まるものであったかを再認識させてくれる。
これからは、もっと周りの人に優しくなれそう……そんな素敵な映画。フラットな感覚で、ぜひフラッと劇場に足を運んで観てほしい作品デス! (増井孝子)
※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオdeショー!』、「おたかのシネマdeトーク」より
劇場版「きのう何食べた?」
11月3日(水・祝)より全国東宝系にて公開
※各劇場の上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。
監督:中江和仁
脚本:安達奈緒子
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社「モーニング」連載中)
<出演>
西島秀俊 内野聖陽
山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、松村北斗(SixTONES)
田中美佐子(友情出演)、田山涼成、梶芽衣子
©2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 ©よしながふみ/講談社
【公式サイト】