世界幸福度ランキング1位の国が生んだ美意識とは 特別展「ザ・フィンランドデザイン展」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

世界幸福度ランキング1位の国が生んだ美意識とは 特別展「ザ・フィンランドデザイン展」

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タピオ・ヴィルッカラ 《杏茸》 1946年 彫刻を手掛け、素材と空間に対して優れた感覚を持っていたヴィルッカラは、特にガラスを得意とし、フィンランドの自然とモダニズムの融合を体現したかのような、有機的でモダンなフォルムを取り入れた。(コレクション・カッコネン蔵)
ティモ・サルパネヴァ 《蘭》 1953年 吹きガラスによる美しいフォルムの花瓶。1954年にアメリカの雑誌『ハウスビューティフル』によって、世界でもっとも美しいオブジェクトに選ばれた。(コレクション・カッコネン蔵)
トイニ・ムオナ 《プレート》 1940-1950年代 作家としてのキャリア全てをアラビア製陶所で過ごした。自然の気配やリズム、ダイナミズムを土や釉薬の質感、色彩、独特のフォルムで表現し、「オーガニック・モダニズム」と呼ばれた。(コレクション・カッコネン蔵)
フィンランドで最も重要なテキスタイルデザイナーの一人ドラ・ユングがデザインしたテキスタイルの数々。ユングは織機を自分で開発するほど、模様の細かい再現性にこだわった。(左:タンペレ市立歴史博物館蔵、中央・右:フィンランド・デザイン・ミュージアム蔵)

 第二次世界大戦後、家庭でのテキスタイルの需要が高まるにつれ、フィンレイソン社を始めとする主要なテキスタイル工場が、デザイナーや芸術家たちとの協働する機会が増えていきます。そんな中、1951年に創設されたマリメッコ社は、「自然体の女性」をコンセプトに掲げ、優れた若いデザイナーを積極的に採用して、これまでにないカラフルで大胆なテキスタイルの表現を打ち出し、フィンランドのテキスタイル業界に新風を吹き込みました。その後、巧みな広告戦略もあり、マリメッコ社は世界中で愛されるフィンランドを代表するテキスタイルメーカーとなりました。

マリメッコ社のドレス。「自然体の女性」をコンセプトに掲げていたマリメッコ社は、ウエストを解放し、女性がゆったりとリラックスして活動できるデザインを提案した。明るく大胆な模様もトレードマークに。(中央・右:フィンランド・デザイン・ミュージアム蔵)

 そして、1960年代、近代的な消費社会を迎えたフィンランドでは、平等と民主主義が浸透し、個人主義の観念が強くなっていきます。独自のスタイルが求められるようになっていき、その大きな役割を担っていくのが、ファッションや広告でした。そして、フィンランドは世界屈指の社会福祉国家へと成長し、2018年より四年連続で「世界幸福度ランキング」第1位に選ばれるなど、若手や女性たちの活躍が目覚ましい社会を創り上げました。

エントランス抜き抜け7mから垂らしているフィンレイソン社のテキスタイル。本展で唯一の撮影スポット。本写真は二階の渡り廊下より。

 秋の深まる丹波篠山の山々に囲まれた兵庫陶芸美術館で、厳しくも豊かな自然と、美しく洗練されたデザインとともに暮らし、その創意工夫に満ちたフィンランドの人々のライフスタイルに触れ、私たちの暮らしのヒントを見つけていただければ幸いです。
(兵庫陶芸美術館学芸員・マルテル坂本牧子)

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

◆ザ・フィンランドデザイン展-自然が宿るライフスタイル-
会場 兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4)
会期 ~2021年11月28日(日)まで
開館時間 10:00~18:00(入館は閉館時間の30分前まで)
休館日 月曜
観覧料 一般1000円、大学生800円、高校生以下無料
電話 079-597-3961(代表)、FAX 079-597-3967


・兵庫陶芸美術館 公式HP

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