あなたは髪を切るとき、理容室と美容室、どちらを利用していますか? 髪を切ってもらいながら、ふと思いました。理容師と美容師の違いって、何だろう。理容室の店先では赤・青・白の「サインポール」がくるくる回っているけど、美容室にはないな……とか、ぼんやりと考えていましたが、もっと詳しく知りたい! 法律上ではどう違うのか、「かなえ法律事務所」(神戸市中央区)の森本圭典弁護士に聞いてみました。浮かび上がってきた意外な事実とは……?
◆理容師も美容師も国家資格。「理容」「美容」の違いは?
「そもそも理容師も美容師も国家資格です。理容師は、厚生労働大臣または都道府県知事が指定する理容師養成施設を卒業し、理容師国家試験に合格すると、理容師になることができます。美容師も同じく、養成施設を出て、国家試験に通る必要があります。理容師と美容師は異なる資格のため、理容師は理容所でしか働くことができず、美容師は美容所でしか働くことができません。それぞれ理容師法、美容師法と、根拠となる法律も異なります」(森本弁護士)
そもそも、「理容」とは何か。理容師法では、「理容とは、頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えることをいう(第1条の2・第1項)」と定められています。ただし、これは例示であって、限定ではないと解釈されています。「頭髪の刈込、顔そり“等”」とあるように、理容師が頭髪の刈込と顔そりしかできないわけではありません。
一方、「美容」とは何か。美容師法には、「美容とは、パーマネントウェーブ、結髪(けっぱつ)、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう(第2条第1項)」とあります。こちらも同じく、「化粧“等”」とあることから、限定ではないと解釈されています。
理容師と美容師は、異なる国家資格ではあるものの、実際に理容師や美容師が行っているのは、髪を切ったり、髪を染めたり、パーマをあてたり……と、いまではほとんど違いがありません。
◆昭和30年ごろ、それまでの理容・美容の概念が崩壊
昭和の前半くらいまでは、男性は短髪、女性は長髪という概念がありました。そのため、理容師は男性を対象とし、髪を切ることと髭を剃ることがメインでした。一方、美容師は女性を対象とし、パーマや髪のセットがメインでした。
ところが、昭和30(1955)年頃から、男性の長髪化やパーマが普及し、女性の短髪化も広まっていきました。男女問わずヘアスタイルが自由になったことにより、単純に、理容師は男性、美容師は女性という、これまでの概念にあてはまらなくなったのです。