2021年10月、皇室の菩提寺・御寺(みてら)として知られる京都市東山区の「泉涌寺(せんにゅうじ)」の舎利殿で感染対策を施しながら行われた奉納演奏は、聴衆を魅了した。泉涌寺では毎年秋に奉納演奏を行っている。5年目を迎えた。
神戸から訪れた30代の女性は「かつて須磨寺のイベントで、大勢で奏でる演奏に迫力を感じたが、今回は3人の演奏。3弦だけのシンプルな響きが心に染み入った」と話した。
■「琴の音止めずに…」明日への励みに
2021年11月、久し振りの 「おさらい会」が須磨寺で催された。鍛錬の成果を発表する「おさらい会」は、保存会メンバーにとって演奏機会が激減する中、晴れ舞台となる。当日の会場では、皆が安心して演奏し鑑賞できるように、細やかな工夫や準備を怠ることはなかった。メンバーは、こうした機会に改めて「ありがたい」と思えるようになった。
あるメンバーは「長く続いた緊急事態宣言もあり、十分活動ができない中でも琴の音を止めずにお稽古し続けてきた。その気持ちをくみ、明日への励みとなるようにと保存会が考えてくださったお陰で、琴の音色と紅葉の色を一度に楽しむ素敵な秋の一日になった」と微笑んだ。
2022年が明けた。早速、「初弾き」が予定されている。地元の神戸市立高倉中学校・一絃琴部の文化発表会もある。コロナ禍で迎える2度目の新年、「一絃須磨琴保存会」は継承への”琴の音”を響かせ続ける決意を新たにしている。
須磨寺は源平ゆかりの古刹として知られる。須磨寺には平清盛の甥(おい)・敦盛の首塚が祀られ、敦盛の菩提寺ともなっている。一絃須磨琴の音色は、平家物語で最も涙を誘う哀話「敦盛最期」や平家滅亡の哀れみを表わすかのようだ。
