店の入口、軒下にたたずむ門松。よく見ると、竹ではなくパンが使われている。「青竹」を囲う「むしろ」も含め、全て本物のフランスパン。この風変わりな「フランスパン門松」が出迎えてくれるのは、兵庫県赤穂市にあるベーカリー「あこうぱん」。15年以上も前から毎年飾っているそうだ。
店主の鈴木誠さんに、フランスパンで門松を作るようになったきっかけを聞いた。すると……ズバリ! 「お客さんに喜んでほしいから。」お正月も、パンでお客様に喜んでもらえないかと考えたときに、鈴木さんの妻がフランスパンを松の葉で飾り付けしたのがはじまりだそう。気温が下がる冬の時期は、フランスパンもカビがつきにくく日持ちがする。また、表面の硬さも、門松にするにはうってつけだったとか。
「今朝も、窓から店の外を見ると、フランスパン門松と一緒に写真を撮っている親子の姿が見えました。喜んでもらえていると思うと、自分もうれしく感じます」と鈴木さんは話す。なお、パン製のお正月飾りは、1月中旬にかけて飾られた後、細かく崩して鳥の餌や畑の肥料などとして活用されるそう。
そしてここ数年、門松に加えて同店の「お正月名物」として親しまれているのが、この時期限定の「花柚子クーロンヌデロワ」。「クーロンヌデロワ」は、新年を祝うためのフランス伝統のパンで、王冠の形をしており、クロワッサンのようなサクサクとしたパイ生地の食感を楽しめる。
同店ではこの「クーロンヌデロワ」に、姫路市安富町産の「花柚子」を使っている。他の柚子よりも果汁が多く、香り高いのが特長。しかも、収穫は同店のスタッフが自分たちの手で行う。収穫作業を通して、農家の方の苦労と柚子への深い愛情を知り、柚子の皮や果汁も残さずパンに有効利用したいと考えた鈴木さん。皮は砂糖水に漬けてコンフィに、果汁はゼリーにし、それらをクロワッサン生地にたっぷりと巻き込んで焼き上げる。
「お客様に喜んでほしいのはもちろん、花柚子を生産した農家の方にも喜んでほしい。」花柚子クーロンヌデロアは、鈴木さんのそんな熱い思いが生んだ一品だ。
また同店では、これまで数々のユニークなパンも作り続けている。その数なんと、150種類以上! 地元の将棋大会の景品として「大きな将棋のコマを模したパン」を作ったことも。街の人から「パンでなにか景品をつくれないか」とリクエストされたもので、「パンの焼き加減(による茶色)が本当に将棋のコマみたい!」と子どもたちにも大好評だったそう。
◆あこうぱん
〒678-0233兵庫県赤穂市加里屋中洲6-24
電話:0791-42-3565
営業時間:平日6:00~18:00、土日祝7:00~18:00
定休日:月曜日(祝日の場合は営業)、火曜日
【公式サイト】