夏は冷奴で、冬場はお鍋にいれて……冷蔵庫にあると何かとうれしい「豆腐」。最近では、コンビニでも手軽に購入できるようになっていますが、どんな時にどんな豆腐が合うのか、考えたことはありますか? 滋賀県彦根市で100年以上豆腐を作り続ける、老舗豆腐メーカー・棚橋食品の棚橋朋大さんに詳しいお話を聞いてみました。
絹ごし豆腐と木綿豆腐の一番の違いは、その食感です。絹ごし豆腐は、熱した豆乳ににがりを加え、よく混ぜて静かに置いておくことで固めて作るもの。なめらかで喉越しが良いため、冷奴としてそのまま食べたり、みそ汁に入れたりすると、つるんとおいしくいただけます。一方で、キメが細かく、崩れやすくて味も染み込みにくいため、鍋などに入れる際には注意が必要なのだとか。
木綿豆腐は、熱した豆乳ににがりを加えたのち、固まりかけているところを崩して、圧力をかけて押し固めながら作るもの。水分の量が少なく、しっかりとした固めの味わいが特徴です。絹ごしより固めで崩れづらく、味が染み込みやすいので、麻婆豆腐や鍋など、煮込む料理にぴったりです。
もう一つ気になるのは、パックの中に水が張ってあるものと、豆腐がそのまま入っているものの違いについて。水が入っているものは、「カット豆腐」といわれる昔ながらの製造方法で作られた豆腐です。豆腐の周りに張ってある水は、「封入水」と言われるもので、ほとんどの場合は水道水と同じようなものなのだそう。カット豆腐は、10キロ分くらいの大きな豆腐を切り分けたもので、パックする際に水を張ることで、空気との接触部分をなくして豆腐を傷みづらくしているのです。この「封入水」は、飲んでも人体に影響はないそう。ただし、豆腐から出る水分なども含まれるため、気になる人は一度洗い流してから使用した方が、豆腐本来のおいしさを楽しめるということでした。
そして、水が入っていない豆腐は「充填豆腐」と呼ばれるもの。こちらは、冷やした豆乳ににがりを加え、パックした後に加熱・殺菌して固めたもの。パック内で固めるので、より柔らかい豆腐を作ることができ、空気に触れるタイミングが少ないので、カット豆腐よりも長持ちするそう。充填豆腐の方がメリットが大きいと思われがちですが、昔ながらのカット豆腐は高齢の方などを中心に根強い人気があり、このカット豆腐を作り続けているメーカーも多いようです。
棚橋さんによると、「どの豆腐を、どんな料理に使っても、最終的にはおいしいですよ!」とのこと。みなさんも、自分好みの豆腐を見つけてみては?
(取材・文=村川千晶)