「一人だけど“独り”じゃない」 障がいある家族の物語を名曲が温かく紡ぐ 映画『Coda あいのうた』レビュー | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「一人だけど“独り”じゃない」 障がいある家族の物語を名曲が温かく紡ぐ 映画『Coda あいのうた』レビュー

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(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

 作品では、音楽が大きな役割を果たしている。そのため、タイトルの「Coda」は、楽曲の終わりを示す音楽記号の“Coda”かと思っていたが、”Child of Deaf Adults”(ろうあの親を持つ子供)の略語なのだそう。

 実はこの作品は、2015年に公開されたエリック・ラルティゴ監督、ルアンヌ・エメラ主演のフランス映画『エール!』のリメイク。オリジナルの舞台はフランスの田舎の酪農場だったのが、今作ではアメリカの海辺の町で、設定も漁業を営む一家に変わっている。

 シアン・ヘダー監督の期待の今作。2021年1月に、コロナ禍でバーチャル上映となったサンダンス映画祭で、グランプリ、観客賞、監督賞、アンサンブルキャスト賞の4冠に輝き、上映の2日後、アップル社がサンダンス映画祭史上最高額の2,500万ドル(約26億円)で配給権を獲得したことでも話題となった。シアン・ヘダー監督初の長編映画『タルーラ~彼女たちの事情~』(2016年)も、サンダンス映画祭でプレミア上映され、高い評価を受けた。この映画祭との相性もいいのかもしれない。

 母ジャッキー役に、デビュー作『愛は静けさの中に』(1986年)でアカデミー賞とゴールデングローブ賞に輝いたマーリー・マトリンをキャスティング。父と兄役を含めた家族3人を「すべて、聴覚障がいのある俳優が演じることが重要だった」と監督は言う。

 家族の中で自分だけが健聴者として生まれ、どこか疎外感を持っていたルビー。けれど、彼女は決して独りではなかった。多様な個性を持つ家族それぞれが、それぞれの生き方で、夢を持って自立し、また、支え合い寄り添い合って生きる。素晴らしいファミリー、そしてその新たな旅立ち…。

(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

 音楽記号のCodaを充てるとしても、この映画は決して「これで終わり」のCodaではない。次に始まる第2楽章に続くCoda…。はてさて、どんな“あいのうた”がこの後の物語を紡いでいくのか、はや、続編に期待が膨らむ。(増井孝子)

※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオdeショー!』、「おたかのシネマdeトーク」より


【『Coda あいのうた』公式サイト】

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