巻き寿司1万3千本 コロナで製造・販売断念「申し訳なく涙。恩返しを」 兵庫・マイスター工房八千代 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

巻き寿司1万3千本 コロナで製造・販売断念「申し訳なく涙。恩返しを」 兵庫・マイスター工房八千代

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 今年1月に入り、再び猛威をふるっている新型コロナウイルス。感染拡大の影響が、この時期の風物詩にもおよんでいる。具だくさんの巻きずしが各メディアで紹介される「マイスター工房八千代」(兵庫県多可町)は、節分を目前に控え、スタッフの罹患により巻きずしの製造・販売を断念。約1万3千本の予約をすべてキャンセルし、店も1月29日から当面の間休業することとした。

「(営んできた)20数年間で一番悲しい出来事。でも、皆さまの温かみがさらによくわかって感謝の気持ち」と話すのは、自身も陽性判定を受けた施設長の藤原たか子さん(74歳)。現在症状はないとのことで、本人の意思を確認のうえ電話で話を聞いた。

 藤原さんが陽性判定を受けたのは先週後半。持病があることから、医師の勧めを受けて入院した。「お客さんにこんな迷惑をかけるんは初めてやから、どうしたらええかと。手伝いに来てくれる人、(材料の)生産者にも迷惑がかかるというんで、病院の中で一晩泣きました」と明かし、「若いスタッフはようやってくれたんですけど……私が決めなしゃあない(決めないと仕方ない)」と、苦渋の決断を振り返った。

 同施設の名物「天船(あまふね)巻寿し」は、1日1,500~2,000本売れる人気商品。かんぴょう、たまごなど5種類の具材を巻き込む。一般の巻きずしに比べてきゅうりが大きいのが特長だ。節分には、例年1万5千本前後を販売する。今年は予約分と当日購入分を合わせて1万3千本以上を、約60人で夜を徹して巻き上げる予定だった。材料の調達も済んでいた。

マイスター工房八千代の「天船巻き寿司」((写真:ラジオ関西)
手作業で巻き上げる(写真:ラジオ関西)

 きゅうりは、地元兵庫や九州の契約農家に約8,000本を「無理を言って」注文していた。生ものなので長期保存ができない。しかし生産者を思うと返却はできず、従業員と話し合って買い取ることに。無駄にせず何とか活用できるようにと、取引先などにあたって引き取り手を探したところ、すべての引き取り先が決まった。「みんな助けてくれた。1件で70箱買うてくれたところもあったんです。本当にありがたい」と藤原さんは、感謝を口にした。

 スタッフの中川奈苗さんによると、約1万3千本の予約に対するキャンセルの電話は、従業員で手分けしてほぼ済ませたと言う。「激励もいただいています。施設長の言葉通り、“何事もお客さま最優先”で取り組んできたことが返ってきているのかな。買っていただくことへの感謝はもちろんですが、ピンチの時に助けていただけたこと……。お客様にも取引先にも理解していただいて、感謝しかないです。こうなったからこそわかったこともたくさんあったので、今後、皆さんに(何らかの形で)お返しできると思います」と話した。

 地域の人たちは、極力外出を控え、空間除菌や消毒、マスクを重ねて着けるなど、意識いっそう高めて感染拡大防止に努めているそう。また、同施設では営業再開後も、客同士で密が生じないよう配慮するなどの感染予防対策を万全に施すとしている。

 昨年2021年には、医療従事者への感謝の気持ちを込め、県内全域の新型コロナウィルス患者に対応する、兵庫県の新型コロナウイルス感染症拠点病院「県立加古川医療センター」に、約900本の巻きずしを差し入れた同施設。藤原さんは、「人の温かみ。私の一生の宝やと思いました。きっとまたおいしいものを作ります。元気になって恩返しできるようにがんばります」と前を向いている。

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