2022年、関西と九州を結ぶ「フェリーさんふらわあ」が50周年を迎えた。運航する株式会社フェリーさんふらわあ(神戸市東灘区)は、長きにわたりフェリーを運航し、様々な新しい取り組みも行っている。同社で企画やマーケティングを担当する尾石実さんに、船旅の流行の変化などについて話を聞いた。
現地に泊まらずに船中泊をする「弾丸フェリー」という言葉を生み出した、フェリーさんふらわあ。2011年、客離れを防止するため、サッカーのワールドカップで人気を集めた「弾丸ツアー」をヒントに企画したという。そんなアイデアもいかしながら航海を続ける同社は、新型コロナウイルスが感染拡大する以前、多いときには年間約45万人、乗用車約8万台、トラック約20万台を運んでいた。尾石さんは、旅客のトレンドなど、時代の流れを感じていると打ち明ける。
「新幹線が一般化する前は船が旅の足として主流でした。しかし1970年以降、新幹線や飛行機がより身近な乗り物となったことや、高速道路の進歩によって海上航路の廃止が相次ぎました。その中でさんふらわあは厳しい時代を過ごし、航路や船主を変えながら継承してきました。2000年以降、インバウンドのお客様の乗船が徐々に増加。一方、国内のお客様は団体旅行から個人旅行の流れになっています。昨今のコロナ禍の中では、密を避けた旅行としておひとりでの申し込みが顕著にシェアを広めています」(尾石さん)
「弾丸フェリー」だけでなく、近年は新たな取り組みとして船上ヨガ教室や星空教室、謎解きゲームなどを船内で行うほか、2010年からは夜の航海ではなく、“昼の瀬戸内感動クルーズ”と称してクルーズ気分で昼間に乗船できる企画を年4回ほど実施(現在はコロナ禍の為中止)。昨春には、航海中にスマホの電波が通じないときにも船内で楽しんでもらおうと、「女性客をメインターゲットに、船の豆知識や船内の過ごし方などを知ってもらうことを意識して、商船三井、商船三井フェリーと共同で企画した」船内フリーペーパー『CC Time』を創刊。50周年となる今年はコロナ感染状況を鑑みながら、密にならないイベントなどを検討しているという。また、50周年のノベルティの配布や記念グッズの販売も予定している。
そして2023年春には、大阪-別府航路で日本初のLNG燃料フェリー「さんふらわあくれない」「さんふらわあむらさき」が就航予定。二酸化炭素排出量が20パーセント低減され、大気汚染の一因となる硫黄酸化物の排出もほぼゼロになるなど、環境にやさしいフェリーがお目見えする。その船内では、家族の絆を深める場として、三世代が楽しめるようにと、和室と洋室の両方があるコネクティングルームなどが新設される。
尾石さんはフェリーさんふらわあでの航海の魅力をこう話す。「例えば大阪-志布志航路では、満天の星空が圧巻です。太平洋を航行しますので、星空の明かりしか見えず、キレイな星がかなり近くに感じられます。地球を肌で感じられる瞬間ですので、特に都市圏の方にオススメです」。
【フェリーさんふらわあ 公式HP】
【さんふらわあフリーペーパー“CC Time”】
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