古くは、柳行李をアレンジして生み出したカバンを製造。「カバンストリート」が存在するなど、今なお「カバンの聖地」として知られる兵庫・豊岡市。そんな豊岡に惹かれ、2010年に福岡県から移住。カバンブランドを立ち上げた「Maison Def」(メゾンデフ)オーナーの下村浩平さんが、先週に引き続き、ラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西)に出演。同じく豊岡に住む演出家・劇作家の平田オリザさんらとともに、豊岡の魅力をモノづくりの視点から語った。
移住後、カバンメーカーを経て5年前に起業し、オリジナルブランド「メゾンデフ」を立ち上げた下村浩平さん。「ご縁・ご恩をつないでいきたい」という思いから、このほどアトリエ近くにビルを購入した。1階にショップ、2階は、好きな時に好きなだけモノづくりに取り組める月額制のワーキングアトリエを設置。3階にはセミナースペースを設け、今春のオープンを目指す。
「自分が起業した時に経済的・人脈的に困った経験があったので、後に続く人が困らなくていいように集約化しました。ミシンも20台購入して、材料や加工についても理解ある取引先とつないでいきます。アイデアやクリエイティビティ(創造力)さえあれば、モノが完成する。それを1階で販売して収益化してもらえれば…。3階は、大学で演劇を学ばれている方々に創作活動に使っていただいてもいいですよ。」(下村さん)
この提案には、芸術文化観光専門職大学(豊岡市)の学長も務める平田さんも「いいですね。学生は衣装や小道具も制作しますし、ぜひ豊岡演劇祭の会場としても利用させていただきたい」と笑顔になった。
下村さんは、豊岡市が世界のラグジュアリーブランドと肩を並べる存在になる、と強く訴える。理由の1つは、ラグジュアリー化を果たしているブランドのほとんどが「カバン」を主役に打ち出していること。もう1つは、地理的な要因だという。スイスのジュラ州は、世界で名を馳せる時計のラグジュアリーブランドの多くが本社を置いている地域。人口、面積、気候が豊岡市と似ているそうだ。
下村さんは、「DX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル技術の活用によるビジネスや暮らしの変容)が進む中、『都市から離れた場所で起業することに不安はなかったか』、とよく聞かれるのですが、僕は全く逆だととらえています」としたうえで、「通販の時代だからこそ、カバンが生まれた土地まで買いに行くという“旅”のプロローグとエピローグがしっかりとれる。通販では得られない五感を通じた体験が可能ですね」と話し、平田さんも「“カバン”と“無農薬の食材”、“温泉”といった重層性は但馬の魅力です。豊岡に、カバンを買うことを目的としたアジアの富裕層が来る…。みんな、好きなブランドはその町に行って買いたいですよね」と述べた。
機械式時計のラグジュアリーブランドも擁するジュラには、200年のモノづくりの歴史がある。最初の100年で「組み立てのまち」として栄え、次の100年でラグジュアリー化を果たした。「豊岡はカバン産業が立ち上がって、いまちょうど100年というところ。次の100年をかけて豊岡をラグジュアリー化させることができればいいな、というのが僕の夢です。」下村さんは100年、200年先を見据えている。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2022年2月3日放送回より
【Maison Def 公式サイト】
※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp