小学生の頃に、作文や読書感想文で原稿用紙を使ったことがあると思いますが、真ん中にある、三角形を横に並べたような、特徴的なマークを覚えているでしょうか。当時はあまり何も考えずに見ていましたが、最近改めて原稿用紙を見たときに、これは何か意味があるのだろうかと気になってきました。そう考えていると、400字詰め原稿用紙が一般的ですが、500字の方がきりがいいような気がするのに、なんで400字なのかということも気になりだして……。こうした疑問を解決すべく、数多くの作家から愛される原稿用紙を販売する満寿屋(読み:ますや・東京都台東区)の代表取締役社長、川口昌洋さんにお話をお聞きしました。
![原稿用紙(満寿屋HPより)](https://jocr.jp/raditopi/wp-content/uploads/2022/01/%E5%8E%9F%E7%A8%BF%E7%94%A8%E7%B4%99%EF%BC%88%E6%BA%80%E5%AF%BF%E5%B1%8BHP%E3%82%88%E3%82%8A%EF%BC%89-1024x682.jpg)
満寿屋を運営する株式会社舛屋は明治15年(1882年)創業。原稿用紙のほか、便箋や封筒、ノートなどを製造・販売しています。
![原稿用紙の真ん中にある特徴的なマーク(満寿屋HPより)](https://jocr.jp/raditopi/wp-content/uploads/2022/01/%E5%8E%9F%E7%A8%BF%E7%94%A8%E7%B4%99%E3%81%AE%E7%9C%9F%E3%82%93%E4%B8%AD%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8B%E7%89%B9%E5%BE%B4%E7%9A%84%E3%81%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AF%EF%BC%88%E6%BA%80%E5%AF%BF%E5%B1%8BHP%E3%82%88%E3%82%8A%EF%BC%89-1024x682.jpg)
まずは、原稿用紙にある、三角形を横に並べたような特徴的なマークについて聞きました。
「このマークは古くから使われているもので、形が魚の尾に似ていることから「魚尾(ぎょび)」と呼ばれています。もともと原稿用紙は半分に折って綴じるものとされていたので、真ん中で折るための目印の役割があります。さらに、魚尾のある柱の部分には作品のタイトルやページ数を書き入む場合もあったようです。昔の名残がこのようなデザインとして残っているのです」
さらに、原稿用紙1枚がなぜ400字なのかも聞いてみました。
「諸説ありますが……昔は印刷をする際に、木を削って文字を彫った『版木』というものを使用し、手で刷っていました。お経を紙に印刷することが多くあったのですが、文字の彫りやすさや読みやすさを考えると、ちょうど良い文字数が20字×20字の400字だったのだと考えられます」
![『群書類従』の版木(公益社団法人温故学会所蔵)](https://jocr.jp/raditopi/wp-content/uploads/2022/01/%E3%80%8E%E7%BE%A4%E6%9B%B8%E9%A1%9E%E5%BE%93%E3%80%8F%E3%81%AE%E7%89%88%E6%9C%A8%EF%BC%88%E5%85%AC%E7%9B%8A%E7%A4%BE%E5%9B%A3%E6%B3%95%E4%BA%BA%E6%B8%A9%E6%95%85%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E6%89%80%E8%94%B5%EF%BC%89-1024x683.jpg)
満寿屋の歴史についても聞いてみると、そもそも原稿用紙を作り始めたのは、川口さんのおばあさんが作家・丹羽文雄先生に依頼されたことがきっかけだったそうです。この原稿用紙が評判を呼んでいつしか「文学賞がとれる原稿用紙」とまで言われるようになり、著名な作家も多く愛用。司馬遼太郎さんもその1人だったそうで、オイルショック時に「紙がなくなる」という噂が世間に流れたときには、「原稿用紙がなくては大変だ」ということで5万枚の発注があったのだとか。その他にも川端康成さんや井上靖さん、瀬戸内寂聴さん、阿久悠さんなどそうそうたる面々に親しまれていたそうです。