親のお金を盗んだら罰せられる?弁護士が徹底解説「親族相盗例に該当します」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

親のお金を盗んだら罰せられる?弁護士が徹底解説「親族相盗例に該当します」

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 子どものころ、欲しい物があるけどもお小遣いが足りなくて、ついつい親の財布からお金をとってしまった……そんな経験はありますか? 子どもが親のお金を盗んだ場合には犯罪となるのでしょうか。「かなえ法律事務所」(神戸市中央区)の森本圭典弁護士に聞いてみました。

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 諸説ありますが、一般的に犯罪が成立するのには、「構成要件に該当し、違法かつ有責でなければならない」とされているそうです。わかりやすくみていきましょう。例えば、Aさんが歩いているとき、ナイフを持ったBさんに襲われました。Aさんは身を守るために、近くにあった石をBさんに投げつけたところ、石がBさんの頭にあたり、けがをさせました。この際、Aさんは、故意にBさんにけがを負わせているので、刑法204条が定める傷害罪の構成要件に該当します。しかし、Aさんとしてはナイフを持ったBさんに襲われたためやむを得ず反撃しただけなのに、自分に傷害罪が成立し、刑罰を受けるのは納得できないはずです。

 このような場合、Aさんには正当防衛が成立する可能性があります。正当防衛とは、自分の身を守るために正当な行為である場合には、違法性がない、とされているものです。この例のケースでは、刑法204条が定める傷害罪の要件に該当する行為はしたものの、違法な行為ではなかったとして犯罪が成立しないのです。

 次に同じ例で、12歳のCさんがDさんの腕を切りつけてけがを負わせてしまったとします。Cさんは、故意にDさんにけがを負わせているので傷害罪が定める構成要件に該当します。また、Cさんの行為が正当防衛であったといえるような事情はありません。しかし、Cさんはまだ12歳です。14歳未満は責任能力がないとして、犯罪が成立しないと定められています。そのため、Cさんには責任能力がなく、有責であるとは言えません。したがって、Cさんには犯罪は成立しません。

子が親のお金を盗んでも、罰されない!?
子が親のお金を盗んでも、罰されない!?

 このように、犯罪が成立するためまでには、3つの段階を経ているわけです。ここからは、親のお金を盗んだら犯罪が成立するかについてみていきます。

 16歳のEさんが、一緒に住んでいる母親の財布から1万円を盗んだとします。Eさんは、他人の財物を窃取していますので、刑法235条が定める窃盗罪の構成要件には該当します。次に、Eさんは母親のお金を盗んだのは正当な行為と言える事情もないため、違法となります。また、Eさんは16歳なので責任能力もあります。したがって、犯罪は成立しています。

 ところが、刑法244条は、「親子間で窃盗をした場合にはその刑を免除する」と定めています。親族相盗例と呼ばれるもので、窃盗罪は成立するけども、刑罰は与えないと定めているのです。親族相盗例は、家庭内のことについては国家がむやみに介入すべきではない、「法は家庭に入らず」との考え方から設置されたものです。もちろん、すべての罪に親族相当例が適用されるわけではなく、傷害罪や殺人罪などは親子であっても犯罪が成立し、刑罰が免除されることもありません。

 親族相当例の規定も、親子間の窃盗は許されると定めているわけではありません。犯罪にはなるけども、国家が刑罰を与えるのではなく、「家庭内で然るべき対応をしてください」としているのです。当たり前のことですが、たとえ刑罰が科されないとしても、絶対に人の物を盗んではいけません。親の物であっても決して盗まないようにしましょう。(取材・文=バンク北川 / 放送作家)

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