音が生むさまざまな現象。その中でも今回は「エコー」について、普段はラジオを陰で支えている技術スタッフが、ラジオ番組のなかで解説しました。
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「音」にはいろいろな伝わり方があります。エネルギーが物質によって伝わることを伝播といいますが、音の波「音波」が伝播して、耳に伝わることで音が聞こえるという仕組みです。では、音波にはどんな性質があるのでしょうか。
音波はまっすぐに進む性質(直進性)があります。音源からどこにも反射せずに到達した音波は「直接音」といいます。向かい合って話をしたとき、相手の話す声は直接音として聞こえますが、多くの場合は直接音といっしょに、壁などに反射した音も聞こえています。
また、音波は光と同じように、硬い壁などに当たると反射する性質があります。鏡に光を当てたとき、入射角と反射角が等しくなるという法則がありますが、音波も、壁に当たるときの角度と同じ角度で反射します。壁などに反射して到達した音波は「反射音」と言います。
反射のわかりやすい例としては、山や谷に向かって音を発すると音が反響して返ってくる「山びこ」のような現象。「エコー(echo)」とも言います。反射音の経路が長いと、音が二重に聞こえるような現象が起こってエコーになります。このエコーを、昔の人が「山の神が応えた声」と考えたため、「山彦」(日本神話に登場する「山幸彦」のこと)と呼ばれるようになったと言われています。樹木の霊が応えたという考え方もあり、これは「木霊(こだま)」とも呼ばれます。英語の「echo」は、古代ギリシアの神話に出てくる木の妖精「echo」が語源となっています。
先述のようにエコーとは反射のことですが、カラオケの「エコーをかける機能」のエコーは、音が残って広がったように聞こえる「残響」のことです。残響は、音を止めたときに反射音がたくさん残っている現象で、音響業界では「リバーブ」と呼んでいます。音がやまびこのように残るエコーのことは「ディレイ」と言います。それらを、カラオケではわかりやすくエコーと言っています。
また、硬い平行な壁の間では、音波は、反射を繰り返すうちに特定の周波数が強調され、独特な響きになります。これを「フラッター・エコー(定在波)」と言います。部屋で音楽や楽器演奏を聞いたとき、場所によって聞こえ方が違いますが、これはフラッター・エコーの現象が起こっているためです。壁や天井、床に音が反射して、本来の音と違った響きに感じられるのです。スタジオやホールでは、壁の角度や素材を工夫して、フラッター・エコーが起こらないようにしています。
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【放送音声】2022年2月20日放送回