神戸大倉山・楠寺瑠璃光苑の住職「ラピス和尚」さんが、ラジオ番組を通じて、楽しい仏教うんちくを届けています。日頃なにげなく使っている言葉が、思いもよらない“ふか~い”意味を持っていることも。今回の辻説法は、禅のことば「薫習」について。ラピス和尚に聞いてみました。
◆本日の辻説法
「薫習」
「くんじゅう」と読むこの言葉。薫(かお)りを習得すると書きます。
人には自分でも知らないうちに身にまとっているかおりがあるそうです。気づかないにおいがある、というと、なんだか体臭のようですが、たとえば和尚さんがお経をよんだあとの衣にはお香のにおいがするように、職業や環境によってつくられる「薫」があるのは、確かなことですね。
道元のことばの一節に「古人云く、霧の中を行けば覚えざるに衣しめる」とあります。「霧の中を歩いていたら知らないうちに衣がぬれていた!」という話で、一生懸命にその道を歩いていたら、知らないうちに起こっていることがある、という意味です。
そして言葉は「よき人に近づけば、覚えざるによき人となるなり」と続きます。「あの人のように仕事ができるようになりたい!」、「あの人のようにかっこよくなりたい!」と、憧れの人を見つけて一生懸命近づこうとするならば、いつしか知らず知らずのうちに、その人に似た仕事ぶりやしぐさを身に着けることができるようになるというもの。師匠から弟子に風格が伝わっていくように、その人に漂う“薫り”を習うというということを、「薫習」といいます。
一生懸命に生きているうちに、気が付けば、あの人のようになりたいといわれる人になっていたりすると、とてもかっこいいですね!
(話=ラピス和尚)