ナショナルギャラリーは情報提供者に賞金5000ポンドを出すとして市民に協力を呼びかけ、大騒ぎとなります。
ケンプトンは、盗んだ肖像画をこっそりと自宅のタンスにしまっていましたが、これに妻のドロシーが気づいてしまいます。
「あなたなの? 絵を盗んだの? なんでゴヤの名画がタンスの中にあるの?!」(妻)
「金のためじゃない。これは政治運動なんだ。目的は人類のためなんだから」(夫)
「人類のため? 家族も守れないくせに」(妻)
ケンプトンは劇作家として家族を養いたい、と自分の書いたシナリオをしばしば応募しているのですが全く評価されません。また、家族には長女を自転車の事故で亡くした悲しい過去がありました。
ケンプトンは盗んだ絵を紙に包み、そっと絵を返しに行こうとギャラリーに向かいます……。
ストーリーのもとになっているのは、実際にロンドン・ナショナル・ギャラリーで起きた「ウェリントン公爵の肖像画盗難事件」です。当時イギリスの国民、メディア、世界のアートシーンに驚きを与え、のちに国立美術館の警備体制見直しにつながりました。