兵庫県明石市の高齢者施設で入所者を虐待したとして元職員が有罪判決を受けた事件をめぐり、その様子を写した映像データを消去したとして、証拠隠滅罪に問われた施設長ら2人に対し、神戸地裁明石支部は4日、それぞれに罰金刑を言い渡した。
事件は2020年9月に起き、元職員の女の暴行罪での有罪判決が確定している。
明石市のサービス付き高齢者向け住宅の施設長の男(53)と、運営会社社長の男(55)は、暴行の様子が写された映像データが証拠物になり得ることを知りながらパソコンから消去し、同じデータを記録したマイクロSDカードを隠したとされる。
検察側は「警察から記録媒体のデータを任意提出するよう求められたが拒否し、マイクロSDカードの存在自体を明かさなかった」と指摘していた。
一方、2人はデータの任意提出を拒んだ理由を「入居者の隠し撮りはプライバシーの侵害にあたる」と主張し、起訴された内容を一部否認していた。
消去された映像データは兵庫県警が復元して、捜査や元職員の刑事裁判に影響はなかった。
判決で神戸地裁明石支部は、運営会社社長が施設長に映像を消去するように指示したと認定した。そして「被害者は認知症だったため、本人から事情を聞き取るのは難しかった。こうしたことから、データは犯行状況を把握するための重要な証拠となる」と指摘する一方、「いったんはデータを捜査員に見せており、暴行・虐待の事実そのものを隠していたわけではない」などとして懲役刑の選択はせず、施設長に20万円、運営会社社長に30万円の罰金刑を言い渡した。