「ほかす」。最近、この言葉(表現)を使う人がめっきり減りました。意味は「捨てる」です。私はこうした関西の言葉をあえて意識して使うようにしております。「これ、ほかしといて」などと使います。とはいえ、関西でも「捨てる」を使う人がかなり増えています。
『広辞苑 第七版』(岩波書店)で調べました。
「(ホウカス(放下す)の転)すてる。放置する…(以下省略)」などとあります。
三省堂の『新明解国語辞典 第八版』には……
「〔中部以西の方言〕捨てる。そのまま放っておく」などとありました。
あれ? 関西弁ではない? 「中部以西」という広い範囲で使われている? どのあたりの中部から西? 次々に疑問がわいてきました。
『都道府県別全国方言辞典』(三省堂)を開くと、京都府と広島県の項に「ほかす」の表現が出てきました。京都には地域の特定はありませんでしたが、広島の欄には「県南部」という表記が見られました。ただ、その地域出身の友人は「使わない」とのことで、広島でも使う人は減ってきているのかもしれません。
他の地域ではないかな、と調べたところ、北陸の一部あたりでは使っていた、もしくは使っているようだ……という情報にたどりつきました。石川県金沢市出身の友人に聞くと、「使っていた」と証言。ただ、この友人曰く「『ほかす』というよりは、『ほる』という言い方。(同じ石川の)小松市出身の先輩も言っていた」と話していました。
「ほかす」ではなく、「ほる」という表現は他の地域でもみられます。関西の人も、「ほかす」以外に「ほる」と言います。「これほって」「ほっといて」などと使うことがありますので、同じ県でも、地域ごとの違い、言い方の違い、そして、かつては使っていた時代があったなどの変遷もあるのかもしれません。