「ほかす」は関西弁? 室町時代からの長い歴史 ちなみに「ほって」「ほっといて」は、掘る・放置するではなく… | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「ほかす」は関西弁? 室町時代からの長い歴史 ちなみに「ほって」「ほっといて」は、掘る・放置するではなく…

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 さて、先ほど広辞苑でも垣間見られましたが、改めて、「ほかす」の語源は何でしょうか?

『日本語源大辞典』(小学館)によると……

「『ほうか(放下)す』の変化した語か。ほうりすてる。なげすてる。うちすてる」などとあります。そして参考欄の2番目に、「江戸後期の方言辞典「物類称呼」には、『うっちゃる』『ほうる』を東国のことば、『ほかす』を関西のことばと記している」とも書かれていました。

「ほうかす」という言葉は、室町時代の書物にも出ており、古くから使われていたようです。前出の『日本語源大辞典』には語の初出文献として「虎明本」(※1)が挙げられています。その中の「伯養」に「庭中へ 歯かけの足駄脱ぎ捨てて はくようなくて 谷にほうかす」(※仮名遣いなど現代表記)とあります。

 あくまで個人的な見解ですが、かつては関西で使われていた「ほかす」という表現が、少しずつ近隣に拡がり、それが今も一部の地域で残っている……と考えることができるのかもしれません。仮に、もともと全国で使われていたのであれば、もっと多くの地域に残っていてもいいはずです。ところが、そうではないということは、やはり前者の可能性のほうが高いのかもしれません。

 また、「捨てる」という意味の言葉。「ほかす」「ほる」の他にも存在します。たとえば……「なげる」(北海道)「うっちゃる」(静岡県)「ぶちゃる」(長野県)「ほーたる」(山口県)「ふてる」(高知県)…などいろいろ。実に言葉は、そして使い方は多様だと感じます。おもしろいですね。

 言葉は時代とともに、その意味も使い方も変化します。「ことばコトバ」では、こうした言葉の楽しさを紹介していきます。

※1 大蔵流狂言師・大蔵虎明(1597~1662)が1635(寛永12)年から1642(寛永19)年にかけて書写したとされる狂言台本『大蔵虎明本』。

(「ことばコトバ」第46回 ラジオ関西アナウンサー・林 真一郎)


◆「ことばコトバ」アーカイブ記事

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