町のあちこちに駄菓子屋があった昭和の時代、下町の味として庶民に親しまれた「ぽんせん」。この味を未来に残すために奮闘する会社が兵庫県朝来市にある。
ぽんせんは小麦粉を機械でプレスしてしょう油などで味付けしたシンプルなお菓子。1960(昭和35)年に大阪で創業し、1991(平成3)年に朝来に移転した老舗「マルサ製菓」は、このぽんせんを専門に扱っている。
製造工場は周りを山々に囲まれた、のどかな田園風景の中にあるが、2019年にこの工場が火災に見舞われ、およそ1年間の休業。さらに昨年は店主の妻が病に倒れ、店主の息子、佐賀建斗さんが大学を休学して家業を手伝っている。
火災で製造機械も被害にあい、製造量は激減。それでも佐賀さんはお店のツイッターを開設したり、クラウドファンディングを試みたり、新たにオンラインショップを立ち上げたりするなど、ネットを使って試行錯誤。SNSのフォロワーも増え、これまで取引のなかった地域からも注文が届いた。
もちろん地元のスーパーなども応援している。その中のひとつが、神戸市須磨区にある産直市場「ナナ・ファーム須磨」だ。もともと人気商品だったが、火災のあった2019年以降、入荷が止まっていた。ただ、客からの「ぽんせんはないの?」という声もあり、「マルサ製菓」に久々に連絡したところ、今年2月からの再入荷が決まったという。
佐賀さんは「休業中にもファンの方からたくさん電話をもらった。『早く復活してほしい』『高齢の親が最後にぽんせんを食べたいと言っている』など、多くのメッセージに励まされた」と話す。
今後も材料である小麦の高騰など、苦しい状況に変わりはないが、「時代に合った取り組みで、なんとかこの味を守っていきたい」と決意を語った。
◆マルサ製菓
【公式HP】
■ナナ・ファーム須磨
兵庫県神戸市須磨区外浜町4-1-1
電話 078-733-7722
※店舗ごとに営業時間や定休日が異なるため、詳しくはナナ・ファーム須磨の公式サイトを参照