虐待や貧困などの理由で親元を離れ児童養護施設などで暮らす子どもたちへの就労支援を考えるセミナーが今月26日、神戸市内で開かれる。セミナーを前に、児童養護施設の子どもたちが直面している就労問題について、関係者に聞いた。
親からの虐待や貧困などの理由で児童養護施設など暮らす子どもたちにとって長く問題となってきたのが「18歳の壁」だ。
現在の児童福祉法では、施設で支援を受けられるのは原則、満18歳まで。大学等に進学すれば満22歳の年度末まで支援を受けることができるが、そもそも大学に進学する児童用施設の子どもたちは2割を切っている。高卒者全体の進学率が5割を超えていることと比べればその低さは明らかだ。
逆に、高卒での就職(つまり施設の退所)を選ぶ児童養護施設の子どもたちはおよそ6割を超える。高卒者全体の就職率が2割を切っている現状を考えれば、そこに歴然とした差が存在している。
ただ高卒の仕事は賃金も低いため離職率が高い。「3年未満にその8割が退職している」という調査結果もあるほどだ。
しかし「18歳の壁」があるため児童養護施設では18歳までしか支援を受けられない。児童養護施設の退所者は職を失っても施設に戻ることはできず、セーフティネットから外れ、貧困のスパイラルに陥りやすい。
そうした中で、「18歳の壁」を解消しようと、様々な動きが始まっている。
政府は、「都道府県等が必要と判断するまで」支援を受けられるようにする児童福祉法改正案を国会に提出。また、兵庫県中小企業家同友会では2年前から、児童養護施設の子どもたちに県内企業を訪問してもらうインターン事業に取り組む。企業見学後には経営者と昼食を取り、子どもたちが経営者の人となりに触れることで、キャリア教育につなげるねらいだ。
事業に取り組む、兵庫県中小企業家同友会・障がい者委員会の岸田耕二さん(社会福祉法人すいせい・理事長)は「児童養護施設以外の大人と出会うことで、自分の将来を具体的に考えるきっかけになっている」と話す。
また神戸市会議員で、主催者の1人である神戸センチュリーライオンズクラブの北川道夫会長は「児童養護施設の子どもたちの就労問題は若年層の貧困問題に直結している。子どもたちが貧困に陥らないための支援の形を一緒に考えたい」とイベントへの参加を呼びかける。
◆児童養護施設の子どもたちの就労支援を考える
日時 2022年3月26日(土)13:30~
会場 神戸市総合児童センター7階こべっこホール
参加費 無料(事前予約不要)
共催 神戸市児童養護施設連盟、神戸センチュリーライオンズクラブ