不条理感満載の「超怖い」モダン・ノワール “小路”というより… 映画『ナイトメア・アリー』レビュー | ラジトピ ラジオ関西トピックス

不条理感満載の「超怖い」モダン・ノワール “小路”というより… 映画『ナイトメア・アリー』レビュー

LINEで送る

この記事の写真を見る(4枚)

 強すぎる上昇志向から自ら身を滅ぼす男。悪事のツケは、いずれ回ってきて払わなければならなくなる。因果応報、利用したつもりが利用されていた? 操ろうとしたのに、結局は操られていた??

 人を魅了する“感じの良さ”を持ち、チャンスに恵まれ、愛し信頼してくれる女性にも出会うのに、強欲さと過剰な自信から自らを破滅させてしまうスタン。ジーナやリリスの魅力は、昔のハリウッド映画のファム・ファタル、魔性の女のよう。ケイト・ブランシェットのコスチュームや身のこなしは、どこか、往年のグレタ・ガルボや、ローレン・バコール、ジョーン・クロフォードを連想させる。妖婦の魅力満載で抗いがたく、スタンが、知らぬ間に自滅の坂道を転がり落ちるのも仕方がないのかも……と納得した。

 撮影は、アメリカのバッファローやカナダのトロントの郊外に、カーニバルの設営地や、アールデコのぜいを尽くしたしつらえの架空のナイトクラブを作り上げるなど、大掛かりなセットを用いて行われたようだ。

 社会の暗部を描く陰のあるストーリー。画面もけっこう暗い部分が多いのだが、単にノワール映画然とした色調ではない。中型の感度抜群のデジタルカメラを使って撮られた映像は、暗さの奥にも豊かな色彩が垣間見えるようで、デル・トロ監督ならではの世界が広がっている。何よりこの映画の怖さと不条理感を浮き彫りにしているのは、キム・モーガンとデル・トロが、女性のキャラクターを前面に押し出して書いた脚本だ。

 映画の実現までには4年の歳月をかけたという。その間、スタン役をレオナルド・ディカプリオに断られたり、パンデミックの影響で6か月の撮影中断を余儀なくされたり、公開も延期になったりと、いろいろと大変だったよう。しかし、結果的にブラッドリー・クーパーは正解だった。

 アリー(小路)というより、ラビリンス(迷宮)。異界に足を踏み入れたら、もう逃げ場はない。悪夢は覚めることがない。超怖いモダン・ノワール映画なのだ。(増井孝子)

※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオdeショー!』、「おたかのシネマdeトーク」より


『ナイトメア・アリー』
■監督:ギレルモ・デル・トロ 『シェイプ・オブ・ウォーター』
■キャスト:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、ルーニー・マーラ、ロン・パールマン、デヴィッド・ストラザーンほか
■全米公開:2021年12月17日 
■原題:Nightmare Alley
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン  
(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.
【公式サイト】
※各劇場の上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。




LINEで送る

関連記事