【中将】 そもそもメインボーカルだった財津さんが歌う予定だったんですが、レコーディング直前にスタッフの薦めでサイドボーカルだった姫野達也さんが歌うことになったんです。甘い声の姫野さんが歌ったほうが売れるんじゃないかという判断で、実際大ヒットになったわけなんですが、財津さんは相当不満があったそうですね……。
【橋本】 うわー私なら相当メンタルにきますね! 心の旅に出ちゃいそうです(笑)。
【中将】 心の旅は夜汽車がテーマでしたが、地下鉄をテーマに歌った猫の「地下鉄に乗って」(1972)も同時代にヒットしています。
東京の丸の内線でカップルが会話しようとするんだけど車輪のノイズでままならない……みたいなもどかしい情景を歌った曲です。「赤坂見附」「新宿」など駅名がたくさん出てくるのも面白いところですね。
【橋本】 ほんわかして切なくていい曲ですね。起承転結みたいな作りじゃなくて、じわじわかみしめていくような……。数分ごとに駅に止まりながら淡々と走る、地下鉄ならではの魅力を曲からも感じます。
【中将】 1970年代から1980年代にかけてフォーク、ニューミュージックだけでなく歌謡曲や演歌でも数々の鉄道ソングがヒットしました。狩人「あずさ2号」(1977)なんてタイトルがそのまんま電車の名前です。
【橋本】 「地下鉄にのって」とは180度違う「ズドーン!」とした特急感が出ていますね(笑)。デビュー曲にこめた狩人のお二人のはりきりを感じます。
【中将】 当時、あずさ2号は歌詞通りに午前8時発の新宿駅から長野県北部行きの始発特急として運行していたんですが、1年半後にはダイヤ改正で「8時ちょうど」ではなくなってしまいました。
【橋本】 そういう変化も鉄道ソングならではの魅力かもしれませんね(笑)。