北は日本海、南は瀬戸内海に面した兵庫県。阪神間へは遠すぎてなかなか足を運べない、あるいはコロナ禍で外出がはばかられる高齢者にとっては、むしろWEB配信の方がありがたいとの声もある。映像収録・編集はすべて兵庫県警・県民広報課が担当した。
警察官の現場は、地域パトロールなど交番業務、各種捜査、交通安全などの啓発、災害時の救助など多岐にわたる。それぞれにコロナ感染対策を施して、万全の体制を取っていても、防ぎ切れなかった苦労もあり、音楽隊の練習も隊員同士の距離や間隔を保ち、合奏時間と換気時間のメリハリをつけた。人気のドリル演奏(マーチング)については、密に交差しながら演奏する体型から、演奏者の距離や間隔を変えずに、指揮するドラムメジャーはマスクを着用するなど、最大限、工夫したものに大幅変更した。
エンディングは、コロナ禍で頑張る人々へのエールを送るZARDの「負けないで」を演奏、幕を閉じた。
3年目を迎えるコロナ禍。改めて「エッセンシャル・ワーカー」の存在と、その活躍がクローズアップされている。医療従事者をはじめ、介護や福祉分野、公共交通機関で働く人々、宅配ドライバー、身近なスーパーやコンビニエンスストアの従業員、日夜業務に励む行政職員、消防士、警察官。
どれ一つ取っても、現代社会に欠かすことができない「エッセンシャル」な立場だが、警察直轄の音楽隊として、音楽を通じて何を訴えかけることができるのか、コロナ禍の今、果たして音楽隊の活動が本当に必要なのかを問うこともあったという。
しかし昨年、初めて無観客で開催した定期演奏会、YouTubeでの再生回数は、またたく間に1万を超えた。思うように会場に足を運べない人に、パソコンやスマートフォンからアクセスできる身近さ。そしていつまでも残る記録性。張り詰めた会場の臨場感はなくとも、見えない拍手は隊員の心に響いている。