【橋本】 なるほど。そう言われるとたしかに「夜空」の歌い方にもいろんな要素を感じますね。
【中将】 ジョー山中さんも歌声で日本のポップスシーンに大きな影響を与えた人だと思います。特に「ララバイ・オブ・ユー」(1979)などはスケールと言いクオリティーと言い、当時の歌謡曲というカテゴリーを大きく超えるものでした。ノリが洋楽的で、現代のJ-POPに通じるようなセンスを感じます。
僕は生前のジョーさんのステージを、リハーサルから本番まで通しで観る機会があったんですが、あの天から降ってくるような分厚いハイトーンボイスにはシビれました。今でもあの感覚は忘れられませんね。
【橋本】 「天から降ってくる」という表現が素敵すぎますが、音源で聴いても圧倒される歌声ですね……。
【中将】 これまで尾崎さん、布施さん、五木さん、ジョーさんの楽曲を聴いてきましたが、同じ70年代の曲でも年々より新鮮な歌唱表現が生まれていることがわかりますね。1980年代に入るとそのスピードはさらに加速していきます。たとえばチャゲ&飛鳥(CHAGE and ASKA)の「男と女」(1981)。
【橋本】 お二人のハモりがすごく心地いいですね……。
【中将】 それぞれ個性的で素晴らしい声質なんだけど、後の「SAY YES」(1991)や「YAH YAH YAH」(1993)のようなメガトン級のヒットを生み出すにはASKAさんの声だけだと少し濃厚すぎるかもしれません。またCHAGEさんの声だけだと線が細いかもしれません。二人の声が組み合わさることによって「1+1=2」以上の結果になってるのがチャゲ&飛鳥のすごいところなんですよね。
【橋本】 声って主張があるので、重なることで必ずしも良くなるわけじゃないですもんね。このお二人が出会ってデュオを組んだのは奇跡的だと思います。
【中将】 グループは解消してしまったものの、お二人とも現在進行形で活躍しておられます。またいつか二人で歌声を披露してくれる日が来ることを願っています。
ASKAさんと言えば玉置浩二さんとプライベートで仲がいいそうですが、玉置さんも歌声で80年代のポップスシーンにインパクトを与えた歌手の代表格です。始まりは安全地帯「ワインレッドの心」(1983)。