《JR福知山線脱線事故17年》加害企業の「組織罰」~安全対策への企業努力、むしろ評価される余地が 郷原信郎弁護士

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基調講演では、元警察庁の四方光(しかた・こう)中央大教授(刑事法学)が、将来の事故防止だけでなく、過去の責任追及が必要なのかを問題として提起し「失敗を個人の責任に帰属させるのは、組織構造や組織文化の問題点から目をそらせることになる。影響力を考慮すると法人の責任は個人よりも厳格にしても差し支えない」と述べた。そして、従業員らが業務に関して法令違反して人を死傷させた場合、罰則として、従来の刑事罰とは違う性格を持つ”解散命令”(現在、独占禁止法で事業者団体に適用される)を会社法に盛り込むべきと指摘した。

2012年・笹子トンネル事故で長女を失った松本邦夫さん「9人が亡くなっても、誰も罪に問われないのはおかしい」
2016年・長野スキーバス事故で次男を失った田原義則さん「いまだに結論が出ないのは遺族としてつらい」現在も刑事裁判が続く

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「組織罰を実現する会」顧問で、企業コンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士(元東京地検特捜部検事)は「遺族の思いにどう応えるべきなのか」を問い続け、行き着いたのが「組織罰」の導入であり、これによって、今後同様の事故が起きた場合、誰も何も責任を問われないという事態を招くことなく、展開は大きく変わると述べた。郷原氏は「日本の刑事司法は、個人への道義的責任が中心で、法人そのものを罰するという考えに至っていない」と話す。そして自身が提案したのは、▼業務上過失致死傷罪への両罰規定(個人・法人を問う)の導入と、▼日本版の”司法取引”による法人企業の免責だ。  
 郷原氏は福知山線脱線事故の状況について、2007年6月に航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)が公表した事故調査報告書によって非常に細やかな分析結果が出ており、事故に至るプロセスがかなりの精度で解明されたと指摘する。「手前の駅でオーバーランし、懲罰的な日勤教育を恐れた運転士が、車掌との電話に気を取られ、スピードを落とすことなく急カーブに突入した」ことがそのまま立証できれば、運転士についての業務上過失致死傷罪は成立すると話す。運転士は直接的な加害者とされるが、死亡したからといって罪が立証できないわけではない。ここで問われるのは、「運転手の過失による事故を防止するために、JR西日本が十分な安全対策をとっていたのか」。この点について、JR西日本側が事故防止のための措置が不十分だったとされた場合、法人としてのJR西日本に有罪判決が下される、と考える。

郷原信郎弁護士「『組織罰』の制定は、現行の刑事司法のもとで十分可能」と述べた

 郷原氏はラジオ関西の取材に、「組織罰」の制定は、現行の刑事司法のもとで十分可能だと話した。そして「要はやる気の問題。立法府にやる気を起こさせることができるかどうかが重要だ」と訴える。この制度の大まかな組み立てとしては、巨額の罰金刑を科すようにしているが、まずは行為者、当事者のの業務上過失致死傷罪を問うことができれば、法人の責任も問うことができる。そして法人が安全対策を十分講じていたならば、免責できるという仕組みを作ることが重要だ。むしろ、まともな企業にとってプラスになる。今までならば、刑事罰に問われることはなくとも、企業は非難される一方で辛い思いにさらされたかも知れないが、「組織罰」の導入によって、企業努力として培われてきた安全対策が評価される余地が出てくる。企業は何も委縮する必要はないと強調した。

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