伝承されてきた文化を引き継いでいくのは簡単ではない。このたび、兵庫豊岡市を拠点に活動する「神鍋民謡保存会」の森芳明さんが、ラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西、木曜午後1時~)に出演。郷土民謡の保存について訴えた。
神鍋民謡保存会は昭和43年(1968年)に設立。郷土民謡である「そうだろ節」や「ヤチャ踊」を地域の祭りやイベントで披露したり、小学校の和楽器体験授業で指導したりするのが主な活動だ。
「そうだろ節」の起源は江戸時代にさかのぼる。今から約300年前の享保年間、神鍋の山林では長い間所有権争いが絶えず、江戸奉行所に3年にわたり出訴したところ、再三の実地検分によってようやく円満解決に至った。その宴席で歌われたのが始まりとされている。
「ヤチャ踊」は、数拍の足の動作とわずかな手の動きの中に、優美さが漂う踊り。地域の盆踊りとして親しまれ、お盆や秋祭りに神社の境内やお堂に据えられた屋台を中心に、夜遅くまで踊り続けられたという。
いずれも昭和52年(1977年)に日高町無形民俗文化財に指定され、平成29年(2017年)には豊岡市無形民俗文化財に再指定された。
目下の悩みは後継者不足。娯楽の多様化に加え、かつては谷ごとに設定されていた祭りも、効率化を図り1日に集約されるなど、披露の機会が減った。しかもコロナ禍で、さらに地域活動の機会が失われてしまっていることも大きな痛手となっている。
「盆踊りで親しんだ世代はかろうじて踊れるが、唄う人や三味線、太鼓、笛などの楽器演奏ができる人材となると24人。主力メンバーは70代後半です」(森さん)
2年前に兵庫県豊岡市に拠点を移した、劇作家・演出家で番組パーソナリティの平田オリザさんは、花火大会も中止が続いており、盆踊りも参加できていないことを残念と話したうえで、「地域のお祭りは、かつては出会いの場でもありました。今はシステムの中に入れないと、民間だけで守ろうとするのは難しい。外国人観光客も興味を持つと思うので、(芸術文化観光)専門職大学の学生に教えていただきたいですね。英語で紹介できる人材が育成できれば」と意欲を見せた。
※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp