ラジオ現場の裏側 今が過渡期の「放送線」 90年代から活躍の通信網も次世代に交代へ | ラジトピ ラジオ関西トピックス

ラジオ現場の裏側 今が過渡期の「放送線」 90年代から活躍の通信網も次世代に交代へ

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 インターネット技術の進歩は日進月歩。放送業界も変化が求められます。そこで今回は、放送を届けるために欠かせない回線「放送線」の移り変わりについて、普段はラジオを陰で支えている技術スタッフが、ラジオ番組のなかで解説しました。

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 ラジオ放送の現場では、放送している番組の音源などを「素材」と呼ぶことがあります。その素材や各現場などからの音声は、いろいろな方法で伝送され、放送電波へと送られます。

 ラジオカー中継のように、電波を使って飛ばす方法は今でも主流です。また、野球場や、公開生放送の会場、サテライトスタジオなどからの音は、専用の回線「放送線」を使って音声の伝送を行います。

 全国のラジオ局で、1990年代から中継の際に使われている回線が、NTTの電話線を使用したデジタル通信網「ISDN(アイエスディーエヌ)」です。ISDNが登場する前のインターネット接続は、アナログの電話線を使用した「ダイヤルアップ接続」が主流でした。デジタル通信網であるISDNは、ダイヤルアップ接続より高速なインターネット接続ができたり、通信が非常に安定していたりするなどの特徴があり、今でも、銀行のATM、POSレジ(※1)など企業でも多く活用されています。ピーク時は、1000万件を超える、あらゆる場所で使われていた回線です。

 ISDN回線は、全国のラジオ局で活躍していました。ラジオ関西(神戸市中央区)でも、選挙報道や他の放送局との番組交換、送信所への番組伝送、また、ハワイや中国など海外の放送局との接続もISDNサービスを利用して行ってきました。

全国のラジオ局で使われたISDN 中継用機材

 ラジオでは、音声コーデックの存在も欠かせません。アナログ回線である電話線の両端にDSU(デジタル回線終端装置)と呼ばれる機械を用いて、音声コーデックを接続して使います。音声コーデックは、音声データをエンコード(圧縮)、デコード(伸張)し、デジタル通信網を用いて通信します。データを圧縮してやり取りするイメージです。

 ただ、NTT東日本とNTT西日本が提供するISDNサービス「INSネットディジタル通信モード」は、2024年1月で終了することが決まっています。ダイヤルアップ回線やISDNが「光回線」に置き換わって以降、主流は光回線となっていますが、2015年にNTTから告知があってからは、各社とも光回線の本格的な使用や、4G・5G(第4世代・5世代移動通信システム)などの携帯電波を使った中継機材への移行など、次なる体制への準備を進めています。

 ラジオの音を運ぶ「放送線」が、今まさに、時代とともに移り変わっている最中です。


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宛先⇒ 〒650-8580 ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』係



【放送音声】2022年4月24日放送回

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