「ぶぶ漬けでもどうどす?」というフレーズをご存知でしょうか。京都の人にもてなしてもらい、どこかのタイミングで「ぶぶ漬け」を勧められると、それは「さっさと帰ってくれ」というサインである……。京都人の気質を表すとしてあまりにも有名な小話です。「おしとやか」で「上品」、少々悪い言い方をすれば「嫌味が上手」な、いかにもという「京都人」のイメージに合った話ですが、はたして本当にそのフレーズは京都で使われているのでしょうか?
真偽不明の噂を確かめるべく、京都・祇園でお漬物を販売し「お茶漬処 ぶぶ家」というお店も営む「ぎおん川勝」(京都市東山区)に話を聞きました。
そもそも、フレーズの一部としてなじみのある「ぶぶ漬け」は、具体的にどういった食べ物なのでしょうか。言葉の響きから、なんとなく千枚漬けのような「漬物」を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、ぎおん川勝によれば「ご飯に熱いお茶をかけて食べるお茶漬」のことを指すのだとか。
「ぶぶ」とは京都弁でお茶やお湯を意味する言葉なので、「ぶぶ」と「漬け」でお茶漬けという意味になります。京都でも「お茶漬け」という言葉を使う人もいるそうですが、祇園界隈では昔から「お茶漬け=ぶぶ漬け」と呼ばれていたとか。祇園と言えば、古くから茶屋や料亭が立ち並ぶ京都きっての花街。現在でも「一見さんお断り」な店が残り、どことなく足を踏み入れがたい印象の強い祇園なら、「ぶぶ漬けでもどうどす?」というフレーズが生まれたのもつい納得してしまいます。
「当店の場合は、香ばしいほうじ茶をご飯にかけて召し上がってもらっています。しかし、緑茶を使っているところもあれば、お番茶を使っているところもあります。あくまで体感ですが、家庭では番茶が多い印象がありますね」(ぎおん川勝)
また、ぶぶ漬けには特に決まった形があるわけではなく、使うお茶の種類や昆布やお漬物など、添える食べ物も家庭によってそれぞれ異なります。京都では居酒屋のメニューに「お茶漬け」、もしくは「ぶぶ漬け」がある店も多いそうで、古くから町に馴染んだ食べ物ということが分かります。
さて、やはり気になるのは「ぶぶ漬けを出されたら帰りなさいという意味」というのは本当なのかということ。実態を思い切って聞いてみると……。