農業者の高齢化や担い手不足が社会問題化して久しいが、兵庫県姫路市で持続可能な農業の確立に向けた自治体と民間企業とのユニークな取り組みが始まった。
農業振興で地域活性化を目指している姫路市が、野菜の加工工場を中心に地域一体型のアグリビジネスを全国展開する「ワールドファーム」(茨城県つくば市)に声をかけたのがきっかけ。この動きに東京から金融サービスの「NECキャピタルソリューション」(東京都港区)と地盤改良を得意とする「あおみ建設」(東京都千代田区)、さらに地元から貨幣処理機メーカー「グローリー」(兵庫県姫路市下手野)が賛同。4社で共同出資して今年3月、野菜を栽培・加工・販売する「シラサギファーム」を立ち上げた。
この新会社は、「地域課題である遊休農地の解消に貢献するだけでなく、国産野菜を冷凍して流通するシステムを構築することで、わが国全体の食糧自給率も向上していきたい」という。
地元から唯一参画のグローリーは、長年培ったメカトロ技術(機械工学=Mechanicsと電子工学=Electronicsを高度に融合させた技術)が生み出した省人・省力化ロボットなど自動化機器を提供するとともに、アグリビジネスを通じて独自の貨幣識別ノウハウを応用した野菜の選別技術や青果スコアリング技術(甘味や苦味などおいしさの見える化)を確立していく考え。
シラサギファームが市内で農業参入するに当たり、姫路市も農地や用水の確保と国補助金の活用などで全面協力することを決め、このほど協定を締結した。
同社はすでに姫路市北西部の林田町下伊勢地区10ヘクタールでホウレンソウの栽培を開始。収穫後は小松菜の栽培も始めるという。徐々に同地区外にも農地を拡大し、2025年には冷凍加工工場も建設。10年後には売上10億円を目指す。(播磨時報社)