先日、番組で使う曲を社内のレコード室で探していたところ、この言葉が目に留まりました。CDジャケットの説明には、「古語で『ぶらんこ』のこと」とありました。言われてみれば、何となく音感は似ていると感じましたが、初めて聞く言葉の響きがとても新鮮でした。
三省堂の『新明解国語辞典 第八版』には「ぶらここ」という表記で、「『ぶらんこ』の古風な表現。俳句などで多く用いられる」とありました。
一方、『広辞苑 第七版』(岩波書店)には、「【鞦韆】ぶらんこ。ぶらここ。しゅうせん」とあり、季語として「春」との表記。(「鞦韆」=「しゅうせん」と読みます)新明解には、この「鞦韆」について、「『ぶらんこ』の漢語的表現」とありました。
いくつか疑問がわきました。まず、「ふらここ」が春の季語とは?
広辞苑にはその例として、江戸時代中期の俳人・炭太祇(たん・たいぎ)の「ふらここの 会釈こぼるるや 高みより」という句が紹介されています。
なぜ春か?
「ぶらんこ」は中国などから日本に入ってきたようです。「精選版日本国語大辞典」によると、中国ではその昔、冬至から105日目は火を使わず、煮たり炊いたりしない料理を食べる風習がありました(今もアジアの一部で残っている所があるようです)。そして、こうした風習は、当時の日本の宮中行事にも取り入れられていたとのことで、その日に「鞦韆」=「ぶらんこ」に興じていたようです。なぜ「ぶらんこ」に乗ったのか、理由はわかりませんが、こうした理由もあって「春の季語」になった、と言われています。
いつ頃から日本にはあるのか?
平安時代の827年、「経国集(けいこくしゅう)」という、日本で初めての漢詩文集のなかの「鞦韆編」に嵯峨天皇が詠じたものが載っているようです。ただ、いつ入ってきたのかは定かではありません。しかし、少なくともこの時代の日本に存在したのは事実とみられます。形は今と同じではなかったようですが、確かなことはわかりません。ちなみに、当初は大人たちが楽しんでいたとのことで、江戸時代になって、ようやく子どもたちの遊びに変わったそうです。
ぶらんこの語源は?